【鬼滅の刃】鬼を以て鬼を制す 弐

八十九話:優しい人 ページ45

炭治郎side






日が傾きはじめて、辺りが夕日に染まる

俺は息を切らしながら地面に横たわる



強くて速い...

すごい...




Aさんに攻撃を仕掛けても
簡単にかわされてしまった

おまけに、Aさんの攻撃は全く反応出来ない
くらい速くて、一回も防げなかった



なにより、この不利な立地での斬り合い
何度も山下りをしてきたが
木刀片手に誰かの相手をしながら戦うのは
かなりキツイし、バランスを崩してしまう時も
あった



Aさんが少し心配そうな顔で俺を見下ろした


『大丈夫？』

炭「はい、大丈夫、です」



力なく笑いながら体を起こす


『ごめんね、結構キツかったでしょ
でも、これぐらい出来ないと
鬼を狩るなんて夢のまた夢だからね』

炭「はい...」


『落ち込まないで、中々筋がいいよ
動きをよく観察して、次どう動けばいいかを
判断出来るのはすごく大切なんだ
それが出来てるんだから炭治郎はすごいよ
これからもっと強くなれる

諦めないで続けるように』




そう言って優しく微笑むAさん
俺は元気よく返事をした


炭「はい！！」


俺が返事をするとAさんはまた優しく笑った



炭(...綺麗だな)


『それじゃ、鱗滝さんのとこに戻ろうか』

炭「はい！」





そう言って、一緒に山を下りる

その途中でAさんが言う


『そういえば妹はどう？元気？』

炭「あ...」




その言葉に思わず言葉が詰まり、俯く
そして歩みが止まる

それにAさんが気付かない訳もなく...


『どうしたの？』




俺と目線を合わせるように顔を覗き込みながら
そう聞いてくる

心配させてしまった...


炭「あ...その、すみません」




俺がそう謝る

すると、頭にAさんの手が乗せられた


炭「...！」

『謝らないで
私で良かったら話を聞くよ
ゆっくりでいいから話してごらん』




その優しい声と、人の温もりが伝わり
少しだけ泣きそうになる



炭「禰豆子が...ずっと目を覚まさなくて
医者に診て貰って異常はないって言われたん
ですけど、どうしても不安で...

気付いたら、死んじゃうんじゃないかって
ずっと不安で...」





思わず声が震える

すると、Aさんは俺を抱き締めた


まるで、泣きそうな子供を宥める母親の様に




炭「Aさん！？」

『...たった一人の家族だもんね』

炭「！！」




その静かな声がストンと心に入ってきた

そして、優しさと、悲しみとつらさが混じった
匂いがした

九十話:優しい人2→←八十八話:少年との再会

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す