62話 ページ17
色々と聞きたいことや確認したいことはあった。
だけど頭が混乱してしまい、どうにも言葉を発せないでいると先にビクターの方が口を開いた。
「……お久しぶりです」
「ひ、さしぶり……」
会うのは2年半振りだけど、彼の優しい微笑みはあの頃と全く変わってなくて。
彼の笑顔に落ち着きを取り戻した私は、やっと声を出すことが出来たのだった。
「とりあえず、入る？」
ーー
家にビクターを招き入れ、テーブルを挟んで私たちは色々な話をした。
荘園を出てからどうしてたのか、何があったのか。
ウィックは元気なのか、まだ配達員の仕事をしているのか。
ビクターはここから離れた街で配達員の仕事をしており、ウィックと暮らしているらしい。
慣れない土地での生活は大変だが、それなりにうまく行っているようで。
なんとも彼は配達先で出会った女性ともうすぐ結婚するのだとか。
他愛のない話から始まって、おしゃべりに花を咲かせていたが、
やがてビクターが神妙な面持ちで黙り込んでしまった。
「……どうしたの？」
そろそろ本題に入るのだろう。
ビクターは私に何か話したいことがあって、わざわざ家まで来てくれたこと。
そして多分、その話が私にとって重い話か良くない話であること。
最初から全部、分かっていた。
だからある程度覚悟は出来ている。
「……これを、貴女に届けるために来ました」
そう言ってビクターは鞄から一通の手紙を取り出し、私に差し出した。
その手紙を受け取ると、宛名には私の名前が書いてある。
誰からのものか確認するため、その手紙を裏返したとき私は思わず手紙を落としてしまった。
「……なんで……」
ーー差出人の名前を見た刹那、喉が締まり、心臓が凍りついたような感覚。
「ルカさんから、Aさんへの手紙です。
……どうか、読んであげてください」
ビクターはテーブルに落ちた手紙を拾い、私の目の前へと移動させた。
「……」
大好きな人からの手紙。
だけど嬉しいよりも戸惑いの方が大きくて。
ルカは、私に何を伝えたくて手紙なんか書いたのだろう。
開けるのが怖い。確証はないけれど何故か嫌な予感がするーー。
せっかくビクターが届けてくれた手紙を、私はいつまでも開けられないままでいた。
「……すみません、早いですが今日は帰りますね」
俯き固まる私を見かねたビクターが、軽く会釈して部屋を後にしていった。
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セルナ(プロフ) - 久々に占ツクでガチ泣きしました。こんなステキな作品をありがとうございまし。また、書く機会があれば応援しています！ (2021年2月22日 1時) (
レス) id: 9cc0fe1068 (このIDを非表示/違反報告)
れみこ(プロフ) - 野生の王者さん» 返信遅くなってしまい申し訳ありません……！なんと嬉しいお言葉……！！この作品だけでなく他の作品も読んでくださってありがとうございます！！！ (2020年9月3日 0時) (レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
野生の王者(プロフ) - 完結おめでとうございます！陰ながらずっと応援させていただきました。どの作品も面白く、涙ながらに読ませていただきました。まるで当事者のように胸が苦しくなり、切なくワクワクしました！素敵な物語をありがとうございました！これからも応援しています！ (2020年8月30日 12時) (レス) id: 3c825fe033 (このIDを非表示/違反報告)
れみこ(プロフ) - 沙羅さん» ここまで読んでくださって本当にありがとうございます……！！とても嬉しいお言葉……！！心情描写は頑張りました！！笑 こんな結末で申し訳ないです……。救済できるよう頑張りますね……！ (2020年8月28日 2時) (レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - 完結おめでとうございますと、お疲れ様です…！久々に文字を読んで涙した気がします…深い…。。れみこさんの書くお話はキャラクターの心情とかの描写が細かくてほんと尊敬します…(心がきゅぅってなりました…)ぜ、是非とも皆に救済を…！ (2020年8月27日 17時) (レス) id: 3aa856ffa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れみこ | 作成日時：2020年8月8日 17時
