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おじいちゃんが先生に挨拶をして、おばあちゃんはおれのことを抱きしめた。
事故にあった、としか聞いてなかったので
『お母さんとお兄ちゃん、どうなったの』
と聞いたら、泣きそうな顔で、大丈夫よ、きっと大丈夫だから、と背中を擦られた。
そんな顔で大丈夫と言われても、募るのは不安だけ。
あの頑固でよく怒鳴るおじいちゃんが、何も言わずに黙っている。それだけでどれだけ危ない状況なのか、おれにも理解できた。
途端、怖くなった。
もしこのまま助からなかったら、どうなるんだろう。
おれは一人ぼっちで、家に帰っても誰もいなくて。
名前を呼んでも誰も返事をしてくれなくて、何を言っても誰も答えてくれない。
ずっと、一人ぼっち。
…いやだ、いやだいやだ。そんなの嫌だ。考えただけで心臓が割かれるようだった。
きっと泣くんだろう、わんわん泣いて、枯れても足りないほどに涙を流すんだろう。
いや、まだ大丈夫かもしれない。そんなこと考えるな。
と、思っていたが、
次の日の午前中に、二人とも息を引き取った。
その日のうちにお葬式の準備が始められて、三日後には身内だけで小さなお葬式が行われた。
最後に見たお母さんとお兄ちゃんは死化粧が施され、本当に死んでしまったのかわからないほど、きれいだった。
おじいちゃんは口を結んで、こらえきれない涙をこぼしていた。
おばあちゃんは涙腺が崩壊して、何度も名前を呼んでいた。
そしておれはというと
両手を強く握りしめて、ただ静かに見つめていた。
不思議と涙は出てこなかった。
あんなに泣くと思っていたけど、いざそうなってしまえば、涙のひと粒も出てこない。
泣いている二人の間で、おれだけが無表情。
なんでだよ、悲しいのに。つらいのに。
…なんで、涙が出ないんだ。
なんだかいけないことのように感じて、じんわりと背中に汗が滲んだ。
写真と目を合わせることができずに足元を見つめる。
きっと、あまりにも急すぎた。
この間まで一緒にいた人が、今はもうきれいな花に包まれて、帰らぬ人となっている。
それはあっという間で、過ぎてしまえばもう何もなくなって。
母と、兄と、その存在と、心のぽっかり空いた穴。
きっと、一度に多くを失いすぎた。
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あなくま(プロフ) - あっびーさん» ありがとうございます!気まぐれ更新ではありますが頑張ります!澤村さん直してきますすみません (7月3日 6時) (レス) id: 995ed5925a (このIDを非表示/違反報告)
あっびー - コメン卜失礼します!話とてもおもしろかったです!がんばってください!あと澤村が沢村になっていました (7月2日 15時) (レス) @page5 id: 9335c42a96 (このIDを非表示/違反報告)
あなくま(プロフ) - 怜央さん» ほんとですね…教えていただきありがとうございます!実は前にも消えちゃってたのでまた同じようなことがあるかもしれません…気をつけます! (2022年10月14日 20時) (レス) id: 995ed5925a (このIDを非表示/違反報告)
怜央(プロフ) - コメント失礼します!36話が消えちゃってますよ〜! (2022年10月14日 20時) (レス) id: 8acdf4d0f3 (このIDを非表示/違反報告)
あなくま(プロフ) - ありがとうございます!できるだけ早く更新できるように頑張ります! (2022年10月13日 16時) (レス) id: 995ed5925a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あなくま | 作成日時:2022年9月24日 14時