ちょっとだけ【QK】

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｢山本くん、ゆっくり息吸って｣





真っ黒で埋め尽くされた頭のなかに、光のような、優しい声が差し込んだ。





｢大丈夫だよ、大きく吸って、吐いて｣

『すが、いさ…』



背中をさすりながら優しく声をかけ続けてくれる彼を見た途端、涙が一気に溢れだした。




｢山本？ 大丈夫、体調悪い？｣

隣に戻ってきた福良さんは、子供のように泣きじゃくる僕を見て、嫌な顔ひとつせず、それどころか体調が悪いんじゃないかと心配してくれた。





僕は何を考えていたのか。

大切な、大好きな仲間を疑うなんて。





｢動ける？ 仮眠室、行こう｣



須貝さんの声にただただ頷き、支えられながら移動する。ついたらすぐに、口から言葉が溢れだした。





『すがいさっ……僕、ごめん、なさい…』

｢ゆっくり、ゆっくり。 大丈夫、みんなちゃんと聞くから｣





うまく文にならずに、頭に浮かんだ言葉を並べる。

それでも聞いてくれた。大きく息を吸って、吐いて、抱えてたこと全部話した。






『僕っ…足手まといだとか、邪魔、だとか…アンチで、見つけてっ…』






アンチ、と聞いて、彼らの顔が曇る。
きっと、予想していたものよりも大きかったからなのだろうけど、そんなの気にする暇もなく、言葉を続ける。






『それでっ…朝から、体調悪くてっ…はじめて、行きたくなかった…みんなにも、会いたくなくて…

さっき、もう辛くて、声、かけようと思ったけど……

…怖かったっ…みんなが、ひどいこと言うはずないのに…変なこと考えて…一人で、苦しくなってて…須貝さんが、声かけてくれるまで、気づかなかった…

みんなを疑ってた…信じてなかった…ほんとに、ごめんなさいっ…』







言い切って、大きく息を吸い込む。止まることを知らないのか、涙は頬を流れ続けている。







ふわっと、なにかに包まれる感覚があった。



｢…気づけなくて、ごめん｣





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