82話 ページ34
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「……んっ………くぁ………………」
まだ鉛のように重い瞼を開閉すると、何時も目覚めた光景では無い。隣にすよすよと寝ているイデアくんも居ない。
昨日の昼休みに新しい部屋が出来たとの報告を受けて自寮へ行くと、イデアくんが挙動不審な素振りで私を待っていた。
ニヤニヤしながらの案内の元、イデアくんの部屋の隣には見覚えの無いドアが新しく出来ていた。
此処が私の部屋らしい。
部屋の中は本棚やパソコン台、更にシャワー室も完備されていた。ベッドも偶に来るフェーヂャ達用にと、二つ緊急で配置して貰ってしまった。
予想以上の仕上がりに私は暫く言葉を失い、目を奪われていたが、ハッとして慌ててイデアくんに感謝を述べた。すると彼は、
『ヒヒヒッ……A氏が喜んでくれて何よりですぞ。…費用?……あー。アズール氏と一緒に学園長におど……頼んだから平気ですぞ』
と言っていた。荷物も、オルトくんが運んでくれたらしい。兄弟揃って本当に優しい方達だ。
そんなことで私は心地良い目覚めを迎えたのだった。
人肌が近くに無かったので中々眠れなかったものの、布団に包まって2時間程経てば眠れた。
今日もこの学園はいつもの通り。
穏やかで平和な日常。…………では無かった。
朝食を摂りに大食堂へ行くと、何やら騒がしかった。
騒がしいのは普段と同じなのだが、空気がピリピリとしていたのだ。
「……なぁ、聞いたか?あの話……」
「…ああ、1年のエペルって子が不審者に口説かれたって話だろ?」
「そうそう。しかもその不審者は未だこの校舎内彷徨いてる可能性高いらしくて、魔法で捕まえようとしても無理だったらしいぞ」
「えぇ………何それやば……俺も気をつけよ…」
「お前には来ないだろうから安心しろ」
聞き耳を立てながら朝の紅茶を飲む。
エペルくん、お気の毒に。
他の生徒にも耳を傾けると、この不審者の話題で持ち切りだった。
情報によるとエペルくんは無事で、口説かれた後に全速力で走って逃げたらしい。懸命な選択だっただろう。
…ん、次の紅茶はアップルティーにでもしましょうか。
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アババババ - 80話の最後のフロイド君の発言で草生えました! (2022年11月19日 23時) (レス) @page32 id: 222bdc0355 (このIDを非表示/違反報告)
あ〜ちゃん(プロフ) - 猫さん» 承認しました!こちらこそよろしくお願いします! (2020年7月23日 21時) (レス) id: 9c71528097 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - あ〜ちゃんさん.......私も好物なので有り難いです......!ぜひ御願いします! (2020年7月23日 21時) (レス) id: fc34ad99ff (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - あ〜ちゃんさん» 柘榴です!よろしくお願いします! (2020年7月23日 18時) (レス) id: f20993b4a3 (このIDを非表示/違反報告)
あ〜ちゃん(プロフ) - 猫さん» OKです!ありがとうございます!! (2020年7月23日 13時) (レス) id: 9c71528097 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あ〜ちゃん x他1人 | 作成日時:2020年6月29日 0時