73話 ページ25
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不思議そうに首を傾げるフェーヂャに、私はこう答えた。
「この世界で預言者と会ったので」
辺りを見回すと、
「…あー、小エビちゃんなら床で伸びてるよ」
「おや」
フロイドくんが指差す方向を見ると、監督生さんが目を回して床で気絶している姿があった。
私は彼女の側へ行き、屈んで肩を揺する。
「監督生さん、起きてください」
「…………っう………………??」
「私です。A・ドストエフスカヤですよ」
「ああ何だただの女神か…………………」
ゆっくりと起き上がり、彼女は徐にフェーヂャとゴーゴリくんのいる方向を見た。
「……………嫌だ私ったら妄想拗らせ続けてドス様とゴーゴリくんがいらっしゃるように見えるんだけど」
「ハハハーハハ!面白い子だね!」
「ええ、愉快なお友達を持ちましたね、A」
そんな彼女を見て、ゴーゴリくんとフェーヂャは微笑んだ。
「ファッ」
監督生さんは再び気絶し、私はフェーヂャに向き直った。
「…それで、この間フェーヂャが居なくてムルソーの方は大丈夫なんですか?太宰くんもいるのに…」
この質問に、フェーヂャはああ!と何かを思い付いたように言葉を紡いだ。
「少々看守と太宰くんを丸め込んだだけです。この間の監獄には変身の異能力者がぼくの代わりに入っています」
「なるほど。……それで、どうやって太宰くんを丸め込んだのですか?」
看守ならば金で釣れる。
だが、あの太宰くんは易々とフェーヂャに力なんて貸さない。
すると、フェーヂャは苦虫を噛み潰したような顔をし、俯いた。
「………本当に腑に落ちませんし癪ですが……彼もこの世界に一日だけ滞在する、と云うことで内密にする交渉は成立しました」
「…………つまり、太宰くんが私に会いに来る、と云うことですか?」
「嗚呼!そして、私たちは今回迎えに来た訳じゃないんだ。…今、元の世界に来たら君の帰りを待つ猟犬が口を開けて待っている」
…………。
…………そうか。
そうだったんだ。
私は未だ帰れないんだ。
「……すみません。
「…そう、ですか」
「向こうの世界では貴女は国際指名手配の身です。今、出ていってしまうよりこの世界で安全に暮らしていてください」
私を見つめるアメジストは懇願に近いものだった。
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アババババ - 80話の最後のフロイド君の発言で草生えました! (2022年11月19日 23時) (レス) @page32 id: 222bdc0355 (このIDを非表示/違反報告)
あ〜ちゃん(プロフ) - 猫さん» 承認しました!こちらこそよろしくお願いします! (2020年7月23日 21時) (レス) id: 9c71528097 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - あ〜ちゃんさん.......私も好物なので有り難いです......!ぜひ御願いします! (2020年7月23日 21時) (レス) id: fc34ad99ff (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - あ〜ちゃんさん» 柘榴です!よろしくお願いします! (2020年7月23日 18時) (レス) id: f20993b4a3 (このIDを非表示/違反報告)
あ〜ちゃん(プロフ) - 猫さん» OKです!ありがとうございます!! (2020年7月23日 13時) (レス) id: 9c71528097 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あ〜ちゃん x他1人 | 作成日時:2020年6月29日 0時