好き、嫌い、好き (ページ36)

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side蓮

知り合いのお姉さんに頼まれて
有名店の服を一緒に見に行った帰り。

俺は新作をゲットし、ホクホクとした
気持ちで高級店が立ち並ぶ道を
1人歩いていた。

そしたら、綺麗なワンピースを着て
シンプルなトレンチコートを翻し
可愛らしいお団子スタイルの

いつもとは別人な彩がいた。

｢……馬子にも衣装。｣

いつもながら素直じゃない俺に

『うるせえ目黒蓮。』

いつもながら口の悪い彩。

心の中では彩と呼べるけど、
実際には呼べない俺は、
ほんとに素直じゃない。

いつも俺らを可愛がって
面倒見てくれる彩。

小さい体で誰より姉御肌。

たまに上目遣いで見られると
普通に可愛い。

絶対言ってやんないけど。

『こんなとこでなにしてんの。』
｢そっちこそ。｣
『私は食事してて。』
｢へー、随分おめかししてるんだな。｣
『ホテルでの食事だから。これが普通でしょ？』

は？
男とデートでもしてたのか？
でも男は隣にいないし。

『……デートじゃないからね？』
｢えっ｣
『顔に出すぎ。』

わかりにくいって言われる俺を
分かりやすいって笑う彩。
康二とラウールにもそう言われる。

そんな3人だから、
俺は一緒にいると落ち着く。

『家族と会ってたの。』

彩の家族の話は
康二からなんとなく聞いてはいる。
彩もそれは分かってるのか

『義理の家族とは月に一回は会わないとダメだから。』
｢そっか。いい人達なんだな。｣
『ふふ、そりゃあもう最高の人達だよ。』

彩がにっこり笑う。

『蓮は帰るの？』
｢いや、もう少し見てから帰ろうかと。｣
『そっか、気をつけなね。』
｢何にだよ。｣
『君をジロジロ見ているお姉さんたちの誘惑に。』

そう言いながら肩をポンポンと
叩いて歩いていく彩。

いや、それお前だからな。

さっきから色んな男に
ジロジロ見られてるんだよ。
しまいには一人の男が彩に
近づいている。
あ、これナンパだわ。

俺は、はぁ…とため息を吐いて、
彩の隣に並ぶ。

『へ？帰るの？』
｢…気が変わった。｣
『そーなの？』
｢そーなの。ほら帰るよ。｣

ぐいっと手首を掴んで、歩いていく。

なんでかほっとけない。

俺の優しくて可愛い先輩。

そこら辺の男に触られてたまるか。