好き、嫌い、好き (ページ33)

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side阿部

照と俺は同じマンション。
だからバイト帰りはいつも2人で帰る。

マンションにつくと
エントランスに俺の母親

｢あらおかえり。｣
｢ただいま、母さん何してるの？｣
｢明日のパンがなくて。買いに行こうかと。｣
｢こんな時間にあぶねえよ。俺行ってくる。｣

買い物に行こうとする母親を止めて
代わりにもう一度外へ出た。

照も一緒に行こうかと言ってくれたけど
それは止めて、1人で向かった。

照に宣言したはいいけど、
俺は彩ちゃんに割と恐がられてるし。
どう近づいていこうか、
戦略を真剣に考え出した。

まずは今より近づかないと。
他の奴らに比べたら、
俺のスタート位置はかなり皆から
離れてるわけで。

なんて頭をフル回転させながら
歩いていくと、とあるアパートの前に
見慣れた2人の姿。

え、ここ彩ちゃんのアパートなのか。
その隣にいるふっかは
楽しそうに彩ちゃんと笑ってる。

いいなあ。
俺もふっかみたいに
人との距離をうまく掴める人なら
よかったのに…。

なんて思ってると、
かなりスピードを出したバイクが来た。

あ、彩ちゃん危ない！

そう思ったと同時に、
ふっかが彩ちゃんを引き寄せた。

ズキッ！って胸が痛む。
なんで、そこにいるのが俺じゃないの。

一瞬のことのはずなのに
そのシーンがずっと続いてる。

ふっか、早く彩から離れて。

俺が嫉妬で狂いそうだ。

2人はなにか話してる。

とても大事なことに見える。
もう口説き出したのかよふっか。

2人がやっと離れて、
何かを話して、そのままふっかは
俺が行くスーパーへ歩き始めていた。

今ふっかに会ったら、
意味の無い罵倒をしてしまいそう。

少し離れてから行こうと思ったら、
彩はまだふっかの背中を見つめてた。
ふっかが見えなくなると
アパートに上がっていく彩。

切なくて苦しくて
涙が出そうになった。

俺はお使いを終わらせて
母親からのお礼もそこそこに
すぐに部屋で彩にLINEを送った。

しばらくしてから彩からの返事。

思わず通話ボタンをタップしていた。

彩の声を聞く度に、
好きって言う気持ちが溢れそうで
でもどこか落ち着く優しい声で

これから少しずつ電話したりして
繋がろうって俺は勝手に決めた。

彩、お願い。
ふっかのとこ行かないで。
誰も選ばないで。
俺だけ見てて。