【薄桜鬼】〜美男剣士は、実は女？〜肆

百六十七話　涙の理由は… ページ18

一「副長……これは一体…」


土方「はぁ……とりあえずAに
　虫がついてねぇか見て払ってやれ」


ひょいっと脇の下に手を差し込み
軽々とAを持ち上げて左之助に手渡す。

虫まみれの自分から
少しでも遠ざけてやりたくて。


そうしてから土方は、ようやく
己に振りかかった虫を払い落とした。


───パラパラ…パラパラ…


左之助「お…おう」


新八「Aには……ついてねーみたいだな」


左之助に横抱きに抱えられ
新八とともに隈無く虫の有無を確認された。

その間もAは
まるで人形のように大人しく無抵抗で
目には涙を浮かべている。


視界が滲んで焦点の合わない
虚ろな瞳を見ていると皆、動悸が早まった。

まるで心臓を鷲掴みされたかのように
不思議な心地となり視線を外せない。


新八「ほらA！何泣いてんだ？
　この頼れる兄貴分に言ってみ」


そう、新八が頭を大雑把に
がしがしと撫でながら問いかけるが
未だに呼吸が整わずAは言葉が出ない。

その目からは
話したい意志が痛いほど感じられるが。


土方「……虫を持った総司に
　散々追いかけ回された挙げ句…
　俺ごと虫まみれにされたってとこだ」


代わりに土方がかいつまんで説明した。

ぱたぱたと念入りに身体中を払うものの
まだまだ隙間に入った虫が出てくる。


一「なるほど。この惨状の合点がいきました。
　しかし……総司、あんたという奴は…」


左之助「いつか泣かしたいと言ってたが
　これはやり過ぎなんじゃねぇか」


まさに最悪の有言実行である。


新八「そうだぜ！ちゃんと
　土方さんとAに謝れよ」


総司「……ごめん、なさい…」


皆からの厳しい非難もあって
さすがの総司も素直に謝り意気消沈とする。

珍しく大いに反省している様子だ。


左之助「たくっ……手が空いてりゃあ
　一発殴ってるところだからな」


二つの意味で手が出るのが早い左之助だが、
生憎今はAを抱えて
両手が塞がっているため見逃された。


しかし、Aとしては──…

自分を降ろしてくれて一向に構わないから
左之助にはぜひ総司に
一発でも何発でもお見舞いして欲しい。

未だにしゃくりあげて
話せる状況にないので訴えようがないが。


新八「そりゃあ…命拾いしたな、総司」


総司「……はい」


そのまま踵を返して
総司はふらふらとその場を後にした。



＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊


続く

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ラッキースケベ

斎藤一　風呂上がりの無防備な恰好で出くわすと説教＆襟巻でぐるぐる巻きにされる！なにゆえ？！

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