百六十二話 思い揺らぐ秋… ページ13
元治元年、秋──…
ついに近藤は江戸に赴き
伊東甲子太郎と会談をした。
本格的に彼の入隊が現実味を帯びる中、
それに比例して山南は屯所の一室に引きこもり
一人研究に邁進するようになったのである。
総司「山南さん、まだ起きてるんですか？」
山南「…沖田くんですか？
入って構いませんよ」
ある夜更けのこと、
総司は酒を携えて彼を訪ねた。
──スッ…
総司「熱心ですねー…研究のために
身体壊しちゃ元も子もないのに」
襖を開けて室内に入ると、
真っ先に視界に飛び込むのは
所狭しと机の上に並ぶガラス製の実験器具。
その中を赤い液体がまるで脈々と
身体を流るる血潮のように巡っていた。
山南「ご心配なく。
身体ならとっくに壊れていますから」
皮肉混じりに小さく笑う彼の手には
より濃く凝縮された赤い液体の入った
ガラスの小瓶が握られている。
山南「それより見てください。
改良した変若水です。理論的には
これで副作用が抑えられるはずなんです」
総司「試す気なんですか？
自信があるなら止めないですけど」
その場に腰を下ろして
彼は相も変わらず飄々としている。
山南「どうしたものかと
悩んでいるところです…」
それを飲むことを想像すると、
決まって頭に浮かぶのはAの顔だ。
いかなるときも大切なものが揺るがず
それを守るためならば
身を削る手段も厭わない潔さ。
そこに共感し、努力家で鍛練を怠らぬ
高潔な心根が傍にいて心地良かった。
まるで綺麗なものだけを見て育ったような
無垢で無知な一面には危うさを感じ
小言の一つも言いたくなるが。
山南 (もし……腕が治れば再び刀を握り
早乙女くんと剣技を磨くことも……しかし…)
手にした赤い液体を飲んでから
得られるかもしれないものと
失うかもしれないものを天秤にかけるが、
…────未だ答えは出ない。
総司「まあ、失敗したら僕が斬ってあげますよ」
山南「それは心強いですね」
冗談めかしいやりとりだが、
双方本気で実行する覚悟はある。
腹の底が分かりにくい二人だからこそ
互いに相通じるものがあった。
総司「そんなことより…どうです？一杯」
持ってきた徳利の存在を主張すべく
顔もとまで持ち上げる。
山南「酒ですか……
その方が身体には良さそうですね」
目の前の赤い液体に比べれば
大抵のものは“善”と言えよう。
揺らめく蝋燭の火が
撫でるように小瓶を照らした。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
続く
百六十三話 もしもの時は…→←百六十一話 何度目かのケンカ…
ラッキースケベ
斎藤一 風呂上がりの無防備な恰好で出くわすと説教＆襟巻でぐるぐる巻きにされる！なにゆえ？！
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亜紀野ユキ(プロフ) - リアさん» ありがとうございます(*´ω｀*)執筆意欲が俄然湧きました!! (2022年2月13日 16時) (
レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
リア - 個人的に男装でバレずに焦れる話が好きです。作者様が本当に書きたいものを読めればな〜と思っております。強いて言えばシリアスが好物です笑。この作品で何だか伊東さんが憎めずになってしまい、好きになってきましたwこれからも更新楽しみにしております♪ (2022年2月13日 13時) (レス) @page50 id: 99ed9645a2 (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - ひなみさん» 貴重なご意見恐縮です!!悩ましいですが…ご容赦を(>_<)いずれ男装即バレのR.18アナザーストーリーをupするのでお許しを!! (2022年1月25日 19時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
ひなみ(プロフ) - はじめまして！薄桜鬼も愛されも好きすぎるのでこの作品も大好きなのですが、ＢＬは苦手なので早く女バレさせてほしいです…。読み手は女の子だと分かっていても登場人物は男だと思っているわけだから…どうしてもＢＬに見えてしまって…。でもお話は大好きです！ (2022年1月25日 19時) (レス) @page48 id: 81d9d42d97 (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - 律さん» どうもﾃﾞｽ!!(*^ω^) (2021年12月27日 12時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜紀野ユキ
| 作成日時：2021年9月18日 21時
