検索窓
今日:16 hit、昨日:60 hit、合計:161,912 hit

百五十五話 一歩、また一歩… ページ10

一方、煉獄家では…


「まあ……そのようなことが…」


帰宅した息子からの報告に
居間で向かい合う瑠火は
口に手を当て、言葉を失った。

想像した展開と大きく異なった現実に
なんと言うべきか迷っている。


「次こそはあの子に泣かれぬよう
 誠心誠意努力します!」


「……杏寿郎。涙というものは
 負の感情で流すばかりではありません」


彼らの勘違いを懇切丁寧に説明するのは
さすがに干渉のしすぎだろう。

しかし、これだけは覚えてほしいと
瑠火がまっすぐ目を向ける。


「それはどういう…」


「母上、兄上!Aさんから
 大量のお芋とお手紙です…!」


言葉の真意を問おうとしたが
小走りに駆けつけた千寿郎の声に遮られた。

それが、かの少女からと知り
不意を突かれて杏寿郎は目を見張る。


「あら…杏寿郎宛てですね」


「っ…それは誠ですか!?」


その宛名は“煉獄杏寿郎様”とあった。

まるで磁石のように吸い寄せられ
厚みのある紙の束に杏寿郎が目を通す。


しばらくして───…


「…………なるほど」


手紙から目を離した杏寿郎は
どこかばつの悪そうな顔をしていた。

浮かないその表情を見て
どのような内容かと瑠火が首を傾げる。


「柱合会議にて少女が鬼殺隊に伝えた
 鬼舞辻無惨及び上弦の鬼の能力について
 俺にも詳しく文面で記してくれました」


名指しで手紙を書くのは初めてだ。

意識すると恋文のようで緊張し、
迷った挙げ句Aは
事務的な内容しか書けなかった。

溺れるほどの恋情は
今度直接伝えよう…と考えている。


「少女は常に未来を見ています。
 過去に囚われている自分が恥ずかしい」


初対面の挽回をしたかったが
当人はもう気にしてないようだ。

怖がられてると思うことすら
自意識過剰にさえ感じてしまう。


「……母上」


ならば自分も前を向こうと
杏寿郎が顔を上げる。


「過去に父上から貰い受けて
 特に印象に残った贈り物は何ですか?」


予想外の問いに瑠火はしばし固まるが、
やがて表情を緩める。


「これを見て私の顔が浮かんだ…と
 渡された簪でしょうか」


「なるほど」


「Aさんは今の髪飾りを気に入ってるので
 それ以外のものが良いでしょう」


「む…っ……参考にします!」


そちら方面で悩んだことのない杏寿郎は
初めて大きな壁にぶつかった。

しかし、やがて
Aを浮かべながら訪れた小間物屋で
直感的に“それを”選ぶことになる。



**********


続く

百五十六話 修業編へ…!→←百五十四話 温かく見守られ


ラッキーアイテム

さつまいも 煉獄さんに貢ぎましょう!!


目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (378 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1162人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 鬼化 , 煉獄杏寿郎
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

亜紀野ユキ(プロフ) - 桜井直(なお)さん» ありがとうございます(´ω`*)コツコツ頑張ります (2023年1月29日 12時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
桜井直(なお)(プロフ) - 亜紀野ユキさん» ヒロイン、可愛い。。作者さんは天才!こんないいお話を!続編待ってます! (2023年1月29日 10時) (レス) @page50 id: f84b7d123d (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - 綺羅さん» わっしょいなご祝儀ですね(*´∀`)占いコーナーまでご閲覧嬉しいです (2023年1月18日 21時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - kanayamamoto112さん» こんな子ならストーカー気質でも推せますね(*´ω`*)ほっこり (2023年1月18日 21時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
綺羅(プロフ) - 尊いッ!!見ていて癒やされます、御馳走様です(笑)ご祝儀はサツマイモでも…(笑)そして占いのおはぎに笑いました(笑)一か八かでずんだにして持って行ってみます!← (2023年1月18日 21時) (レス) id: fcc9d08bef (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:亜紀野ユキ | 作成日時:2022年9月7日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。