28余所見 ページ34
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「そんな事があったんですね...」
師範は、ふむ、と顔に手を添えて頷いた。
あり?もしかして怒ってない?
「師範、怒ってないんですか?」
「怒るも何も、幸は別に悪くないじゃないですか」
....確かに。
まぁ、だからと言って、気にしない訳ないんですけどね。
それにしても、師範がそんな事言うとは思わなかった。
師範の言うことは、見事に正論だから、俺の心、傷ついちゃう。
「逆に、そんな事くらいで『怒られるー』って、私のこと何だと思ってるんですか」
「めっちゃ美人だけど正論という名の攻撃をしてくる人だと思ってます」
「褒めてるんですかねぇ、それ」
ふふ、と 普段の師範からは考えられないほど綺麗に笑う。
うん、本当に美人だと思う。
顔だけで言ったら、カナヲ以上。
いや、そんな事言ったら失礼だ。
俺は、知ってる。師範がものすごく優しい人だってことを。
俺は、知ってる。師範が、いつもカナエさんの羽織を抱いて、泣いていることを───。
───あぁ、カナエさん。
貴女が先に逝ってしまったせいで、師範は強がってるんです。
たまに見せる師範の悲しい顔が、本当に痛々しいんです。
でも、俺が師範に声をかけるなんて、出来ません。
どうすれば、師範は救われるんでしょうか──。
「それにしても幸は、カナヲの事が大好きなんですね」
いきなりそんな事言うもんだから、返事に迷った。
でも、俺が悲しい顔をしていたから気を使ってくれてるんだろう。
「え、はい。まぁ、その....」
照れが隠せない。
だって、図星なんだもの。
いつからだっけ、カナヲの事が大好きになったのは────。
──
初めて会った時は、なんの意識もしてなかった。
純粋に「可愛いな」とは思ったが、恋だとかそんなんではなかった。
少し話を変えるが、俺は、自分のこの名前が本当に嫌だった。
「女の子みたい」や「弱そうな名前」と馬鹿にされてきたから。
だけど、この名前の意味を教えてくれたのが、カナヲだった。
俺がまだ、12歳の頃だったかな。
皆でかくれんぼしようとなり、隠れる場所を探そうとしていた時だった。
カナヲが、「どうしよう」とあたふたしていた。
何だか、イラついてしまった。
それくらい自分で考えろ、と。
しかし、放っておくことも出来なくて、気がつけば、カナヲの手を取って走り出していた。
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天の川(プロフ) - 5回目以上の読み返し。はぁ…最高すぎるわ…てか主さん主さん!カナヲは僕の嫁ですよ!!(真剣)(笑) (2022年2月28日 13時) (レス) id: 2d6957fece (このIDを非表示/違反報告)
ゆいな(プロフ) - うわあカナヲちゃん好きなので最高です!! (2020年8月14日 18時) (レス) id: ec54d11116 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - 遅くなりましたが完結おめでとうございます!!幸くんの最後の台詞にやられました!幸くん、男前やん。もうものすごいにやにやしてましたw気持ち悪いぐらいにwお疲れ様です! (2020年5月28日 12時) (レス) id: 05e6c43b69 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃんちゃんこ - お疲れ様です!別垢見つけたら絶対に作品見ます!! (2020年4月28日 17時) (レス) id: cf6601d86b (このIDを非表示/違反報告)
かたつむり。(?)(プロフ) - 宙さん» 暖かいコメント、ありがとうございます‥‥。叩かれる覚悟で言ったのに、そんな優しい言葉をかけてくださり、本当にありがとうございます‥‥!涙出ます‥‥! (2020年4月27日 22時) (レス) id: 40246c291e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かたつむり。(?) | 作成日時:2019年12月22日 8時