27話 運命の番とは ページ29
「…はぁ」
リュ「随分とお疲れだな」
会場のすぐ側にあった中庭のような場所で、Aはベンチに座り、一人ため息をつく。
疲れ果てたAの様子に、一部始終を見ていたリュークが声を抑えて笑った。
「…リュークも見てたでしょ?あの男が"私はLです"って、ふざけたことを抜かしてきたんだから!
頭おかしいとしか思えないよ…!」
リュ「でもアイツ、本当にLなのか?」
「そんなの知らないわよッ!本人に聞け!!」
リュ「ワハハ、そんなに怒るなよ〜。
…でも、もし本当にLだったなら、辛いな。
Aの運命の番なのに、キラとしては最大の敵だぜ?」
"運命の番"
そのリュークの言葉に、Aは顔色を変える。
…どうやらオレは、地雷を踏んだらしい。
Aの顔を見て、リュークは全身から汗が吹き出すような感覚に、襲われた気がした。
「…リューク、私は運命なんて信じないよ。
Ωってだけで、生まれた時から運命の番を決められて、その人を好きになるだなんて」
そう。Ωとαには、この世にたった一人だけ、運命の番がいるのだ。
それは、神様が決めたのかは誰にも分からないが、Ωとαには、必ず運命の番が存在する。
しかし、こんな広い世界で運命の番に会える事はない。大抵、そこらにいるαと番になって、一生を終えるのが、Ωの人生だ。
じゃあ、ただの番と、運命の番の、何が違うのかというと、運命の番に出会えば、お互いに運命の番だと本能で感じ取ることが出来るらしい。
Aも、あの男と初めて出会ったとき、実際、電流が全身に巡るのを感じたのだから。
運命の番に出会った瞬間、お互いが惹かれ合い、一瞬で恋に落ちるという話もあるが、それは嘘らしい。
だって、私はアイツのことを見ても、なーにも思わなかったし。
それに、おかしいよね?
運命の番ってだけで、その人を、一瞬で好きになるだなんて
「そんなの、くだらないよね。
リュークもそう思わない?」
リュ「よく分かんねーけど、Aがそう言うなら、くだらないんだろうなァ」
自分に賛同するリュークの言葉に、Aは心の底から安心する。
反論するならば、その黒い翼をへし折ってやるつもりだった。
「リューク、りんご買ってあげる」
リュ「え、まじで!?」
期待の眼差しを向けてくる死神に、Aが優しく微笑むと、ご自慢の翼でAの周りを舞い出した。
犬みたいに喜ぶリュークを視界に入れつつも、家の帰り道の途中にある八百屋さんに、Aは寄っていった。
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作者名:あっきー | 作成日時:2019年5月1日 12時