12話 薬 ページ14
引き出しの中には、見慣れたいつものデスノートがあった。が、リュークの動きは止まる。
デスノートと共に、大量に出てきたフェロモン抑制剤に、死神は目を離せないでいた。
リュ「…へぇ、驚いたな。てっきりαなのかと思ってたぜ」
「ね？容姿端麗、成績トップで運動神経抜群のくせに、Ωなんて笑えるでしょ？」
そう言ってAは笑ったが、リュークは1つも笑わなかった。
笑うこともせず、リュークはフェロモン抑制剤を興味深そうに、指でつまんでいる。
リュ「お前も、ということは兄もか？」
「ううん。月はβだったんだよ」
リュ「双子なのにか」
「うん。それに、私がΩだって月は知らないの。妹のさゆも」
リュ「ははっ、その嘘もいつかバレるぜ？」
「いつか、ね」
そりゃあ、バレる日はいつか来るんだろうけど、自分なら墓場まで持っていけそうな気がした。
「…あ、そうだ。リューク、面白いものを見せてあげるよ！」
Aはデスノートを取り出すと、引き出しを勢いよく閉めて、パソコンの電源をつけた。
そして、あるサイトを開く。
そのサイトは"救世主キラ伝説"と書かれたページだった。
「見て、このサイトにはね"キラ、アイツを殺して""キラ様は救世主"だの、キラ宛てに沢山の書き込みがあるんだよ」
リュ「…ん？もしかしてキラって、おまえのこと？」
「あ、気付いた？そーだよ、私のこと」
リュ「救世主キラ伝説…かっこいいじゃないか」
「でしょ！？」
リュークのその言葉に、Aは興奮気味に叫ぶ。
少なくとも、Aはキラだと言われる自分を、誇りに思っているようだった。
「ニュースでは、謎の死だとか色々言われてるけど、みんな薄々気づき始めている。
これは神の裁きだって、ふふっ」
自分の理想の世界を頭に思い浮かべ、Aは自然と頬を緩めた。
事は上手く進んでいる。このままいけば…
「Ωも、堂々と暮らせる日がやってくる…」
ｻﾞｻﾞｻﾞｰ！！
突然聞こえた不快な音に、Aは現実へと引き戻される。
何事かとテレビに目を向ければ、先程まで流していたニュースは消え、砂嵐だけが画面に映し出されていた。
『えー、番組の途中ですが、ICPをインターポールからの、全世界同時特別生中継をお送りいたします』
「…え、なに？」
訳も分からずテレビを眺めていれば"それでは始めます"と言う声と共に、スーツを着こなした男性がテレビ画面に姿を現した。
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作者名：あっきー | 作成日時：2019年5月1日 12時
