東京の夜７ ページ21
「Aさんマジで動けないの？」
「う…なんでか動けない。でも３分すれば平気だからそっとしといて。スーツ姿に目がくらんでるだけだから！！」
結弦くんがプッと笑って言う。
「何だそれ。カップラーメンじゃねぇんだから」
結弦くんは私のところまで来ると急に片膝をついて腿をポンポンとした。
「ほい。ここ座って」
「えっ？」
「座るくらい出来るでしょ。早く！」
“早く！”っていう口調が、スケートをしてる時と同じで思わず言うことを聞く。
座った途端、膝の裏と腰に手を回されて身体が持ち上げられる。
「結弦くん！？」
「いいから首に手まわして」
「何っ！？どうしたの？」
「何って動けないって言うから。お姫様抱っこだけど。嫌？」
「だってだって！私、重いよ！」
「嫌なら今すぐ落とすぞ」
睨むように照れて私を見る結弦くんの顔が目の前にあって。
本当は恥ずかしいけど頑張ってやってくれてるんだってことがわかる。
今日の結婚式での新郎新婦のお姫様抱っこが頭をよぎる。
お願いだからこんなことしないでよ…。
泣きそうになってその首にぎゅっとしがみついた。
「ドＳ…」
「こういう時は素直に言うこと聞いとけばいーの」
結弦くんは窓際のソファーまで歩いていくと、私をソファーに降ろした。
「はい到着」
照れ隠しなのか、そのまま肩と腰をぐるぐる回している。
「あの、ありがとう。重くなかった？」
「鍛え方が違いますから」
そう言って私の隣に座る。
「結弦くんって、こんなことするんだ…」
「この状況でこれくらいやんなきゃダメでしょ」
「ふふ。なんだか結弦くんっぽいね」
胸が苦しくなった理由が、わかった。
私はきっと重ねて見ていたんだ。
今日の結婚式の新郎と目の前の結弦くんを。
私はちょっと夢を見てしまったんだ。
結弦くんとこれからもずっと一緒にいられる未来を。
今日の結婚式の新郎新婦みたいにいつか隣で永遠の愛を誓える日を。
でもそれを打ち消さないと結弦くんとは一緒にいられないから。
だからこんなに胸が苦しくなったんだ。
でも大丈夫。
きっと今日は神様からのプレゼントだ。
タキシードを着た結弦くんの隣に立つことが出来ない私へのプレゼント。
こんなに一生懸命な結弦くんと今を過ごせるなら。
タキシードとウエディングドレスじゃなくてもいいよ。
そっと深呼吸をして。
一粒だけこぼれた涙を、バレないように手でそっと拭った。
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らっき(プロフ) - エミルさん» コメントありがとうございます(*^^*)今後はハラハラドキドキというかなんというかの展開（なんだそれ）になりますが、楽しんでいただけたら嬉しいです！お互い楽しんで書けるのが一番ですよね！頑張ります。 (2021年11月23日 21時) (
レス) @page49 id: 4da1a124c4 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 自己満足で書いているけど、やっぱり読んでいる方がどう思われているのか気になりますよね〜。この先はハラハラしそうな展開でしょうか？移行後も楽しみにしていますね。 (2021年11月23日 10時) (レス) @page50 id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
らっき(プロフ) - 鹿さん» この後徐々に何かが起こります！（そりゃそうだ）私ももっと日常の羽生さんを書いてみたいなーと思います。（願望）いつもコメントありがとうございます(*^^*) (2021年11月22日 22時) (レス) id: 4da1a124c4 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 何かが起こりそうな予感がぷんぷんする！続きめちゃ楽しみです＾＾羽生さんのご自宅での様子が垣間見れて幸せでした！確かに、読者さんの顔が見えないのはさみしいですよね＾＾ (2021年11月22日 16時) (レス) @page50 id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
らっき(プロフ) - 鹿さん» 相談相手、いると良いですね。スケートのことなら誰にでもサラっと聞いちゃいそうですよね。んでプライベートのことは話さなそうなイメージです。昌磨さん、平昌の時に比べるとメチャクチャ大人になってました。可愛いからカッコいいになりました。私の中で（笑） (2021年11月16日 8時) (レス) id: 4da1a124c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：らっき | 作成日時：2021年10月13日 14時
