２人の片想い

真相 ページ18

【結弦】

彼女の笑顔、話し方、クルクルと変わる表情を見ているうちに自然と柔らかい気持ちになっていた。


人に気を遣うタイプの俺が、自然と敬語も取れている。


久しぶりに楽しかった。


だけどついに彼女が一つの疑問を口にした。


「あの、それで・・。この間、銀行に羽生さんが来られたことと、今回のお見合いって偶然じゃないですよね？」


何と答えるべきか迷った。


適当に流してしまいたいのと、全ての事情を正直に話してしまいたいのと、正直両方だった。


あれは周りが仕組んだことで、実はあなたにだけ何も知らせずに、僕はあなたを見に行ったんです。
なんて聞かされたらどう思うだろう。


あなたが顔を赤くして、散々だったあの日は、実は他にはなんの意味もなかったんですなんて。


思い返しても酷い。


俺にだけ選択権があって、彼女には一切なかったのだから。


そう考えた瞬間、俺は全てを話し出していた。





【主人公】

つまり、あれは知り合いである双方の親が示し合わせたことだった。


恋愛や結婚を考えていない羽生さんは乗り気ではなかったけど、口座開設のついでに私を見てくるようにと無理やり銀行に行かされ、私を見た目だけで判断するのが気まずかったので会うことにした。


私が泣いて落ち込んだあの日のことは全て仕組まれたことで、私以外の全員が知っていた。
任されたと思って張り切った仕事は、実は全然そんなんじゃなかった。
ただ、私を羽生さんに見せるため。


正直、頭にきて、次に悲しくなった。


羽生さんがしてくれたミスへのフォローも、楽しい雑談も、全てが白々しく思えて。


自分がモノみたいに扱われたみたいでショックだった。


「僕、やっぱり今日は来るべきじゃなかったですよね。本当にごめんなさい」


羽生さんが目の前で頭を下げている。


それを見て、私は自分が険しい顔をしたんだということに気付いた。


多分、うちの父だ。
こんな突拍子もないこと考えるのは。


私が羽生さんに断られても傷つかないように、私には内緒にしたんだろう。


羽生さんにはいろいろな事情があって、きっと断れなかったんだ。


わざわざこうして会いに来て、楽しく話してくれたし、ちゃんと謝ってくれている。


そんな羽生さんを責めることなんて出来ない。

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