満月の夜に乾いたギターを２【完結】 (ページ18)

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大我side.

『行ってきます』

あいないのか

ずっといるもんかと思ってて
こういう時にたまにいないのかって思い出す

ふと目に映るTシャツはシワが寄ってて
あーいつもアイロンやってくれてたっけ

この前は差し入れにあったホールケーキを張り切って持って帰っちゃって
帰って1人しかいないのに気づいて
死にそうになりながら食べた

こういう所にもAの顔が浮かんで
この頃は頭がはっきりしない

「大我？Bメロの歌い出し」

ジェシーがマイクを口にちかづける

『ごめんぼーっとしてた』

「いーよもっかい」

慎太郎がスネアを叩くと
樹のギターソロがはいって
ジェシーのフェイク

自分で音楽の道を決めて
今初めて
なんとなくすべての音がうるさく聞こえて

いやなんとなくじゃない
うるさいな
なんか無理だって耳を塞ぐ

慎太郎が不審そうにこっちを見て
ドラムを止めると次第に音楽が止んで

「きょも１回外行こ」

『なに樹？いいよ続ける』

「ううんダメ 1回休憩」

樹はギターをスタンドに掛けると
俺の肩をもってスタジオを出た

「最近おかしいよきょも」

『何してんだろって自分でも思ってるやめよっかなバンド』

「Aちゃんが悲しむよいっつも会うと大我さんの歌がねーって楽しそうだったから」

『うるさ』

樹は「うるさくないでしょ」って笑うと

「Aちゃんに会ったよてか会いに行った」

って一言

『え嘘』

「マジだって」

『元気そうだった？体調は？飯食ってた？てか教えろよまずほんとAはさ』

「落ち着けよそんな言うなら会ったり連絡すればいいじゃん」

『合わせる顔ないもん』

「あーもう焦れったいな 2人らしいけど」

『これは責任なの俺のもういいでしょ？』

「よく分かんねえけど待ったら答え出るんじゃない」

って何ヶ月か分のライブハウスの使用予定の紙を渡すと

「まあじっくり見て」って樹はスタジオに戻った

10月、11月、12月、パラパラめくると

7月

樹の字か知らないけど 7日のとこに

Aちゃん誕生日！

なんてわざとらしく囲ってあって

なにそれって呆れたけど

張り詰めた心にちょっと余裕ができて

まあそれまでは頑張ろうかなって思えたことだけ
ちょっと樹に感謝した

自分の整理が着くまで時間は余るほどあるから