タイプ(ymmt) ページ5
職場内で異動があった先で出会った素敵な先輩。
「わからないことあったら何でも聞いて」
「はい、ありがとうございます」
優しい笑顔に惹かれたのは言うまでもない。気さくに話し掛けてくれて、誰からも頼られて、憧れの先輩。
「今日もAちゃんは可愛いね」
「へ?」
「うん、癒された。今日も仕事頑張れるなあ」
雑談を重ねるうちに可愛いとか言われるようになった。社交辞令と思いながらも嬉しくてドキドキして上手い返しが思い付かない。
「聞いてよ、昨日うちのがさー」
「山本さんって愚痴言う割には奥さんのこと好きですよね」
「そんなことないけど…」
たまたま聞こえてきた先輩と他の人との会話。なんだ、結婚してたんだ。ばくばくと音を立てる心臓。勝手に盛り上がっていたのは私だけ。
憧れから恋に変わってた気持ちはもう忘れなきゃ。
「Aちゃん結婚おめでとう」
「ありがとうございます」
新しい名字になってから久しぶりに会った先輩は前と変わらず優しく話し掛けてくれる。今日は時間があるから、と色んな話をした。
「年下の旦那さんか。まあAちゃん可愛いもんね」
「全然ですよ。山本さんの奥さんは絶対可愛い人なんだろうなって思ってます」
きっと可愛くて何でも出来ちゃう人なんだろうな。
「あー…可愛い?可愛いのかな?僕よりちょっと年上だから可愛いっていう年齢でもないのかも」
「え、そうなんですか。喧嘩とかします?」
「もちろんするよ。僕も言い返したりするし。結構キツイこと言うかも」
「意外ですね、山本さんが暴言とか考えられない」
「全然言うよ。前はずっと我慢してたけど、我慢してても何も解決しないじゃん。だから違うことは違うって言うようにしてる」
優しい人だと思っていたからビックリした。でもそうだよね、我慢してるだけじゃ意味ないよね。
「僕ね、実はAちゃんが異動する前から知ってたんだ。可愛い子がいるなって」
「え、そうなんですか?」
「うん。でもさ、部署違うし話し掛けるのも出来なくてさ。これ言ったら引かれるかもだけど」
「なんですか?」
「Aちゃんがみたいな子がタイプなんだよね」
「ま、またまたー、冗談ですよね」
「本当だよ。本当にタイプなの。でもお互い結婚しちゃったじゃん?遅かったなって」
「あはは、そうですね。結婚しちゃいましたね」
笑って誤魔化したけど、すごく嬉しかった。
冗談だとわかってるけど、また気持ちが戻ってきそうで怖かった。
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作者名:亜杞 | 作者ホームページ:
作成日時:2023年6月3日 18時