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「なんで髪乾かして来ないの?」
Aと距離を詰め、首にかけてあるタオルで髪をわしゃわしゃと拭く。
「…自然乾燥派」
Aはびっくりしたのか目を見開いてる。
服装と言い、髪と言い、天然なのか抜けてるのか。
ほかの奴の前でもこんなだったらやだなと思いながら
「ドライヤーしてあげるからここ座って。」
と言った。
間
ぶぉーと音が響く室内で
「熱くない?」
などと聞きながらドライヤーをかける。
Aはドライヤーに慣れてないのか最初はソワソワしていたが
しばらくして慣れたみたいで気持ちよさそうに目を細めている。
なんで表情が見えるか?
そんなの洗面所の鏡に俺たちが映ってるからにきまってんじゃん
「ねえ、私の両親が離婚したの知ってたっけ?」
Aがおもむろに口を開いた。
「まあね…」
「私両親が離婚してから…いや、離婚する前からか。パパは仕事か浮気相手のとこで帰ってこないし、専業主婦だったママも仕事はじめてあんまりかえってこなくなってさ、それから今まで家で私ひとりだったんだけど」
疎遠になった彼女から初めて聞けた家の話。
軽率に口を挟めない内容なので黙って話を聞く。
「なんかこうやってさ…家で誰かと一緒にご飯食べたり、今みたいに世話焼いてもらったり。上手く言えないけど、心がポカポカするね…!」
にへらと笑うA
「俺のとこもあんまり親帰ってこないし、うちで良ければ好きなだけいなよ…ウザイくらい世話焼いてあげるからさ」
「……反則じゃん」
そう言ってAはどこかに逃げてしまった。
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よね(プロフ) - 面白い…仕方ないからお気に入りにしてあげる。 (2020年8月23日 16時) (レス) id: d933d129b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めろこ | 作成日時:2020年6月4日 13時