家族と相棒 ページ16
涼介サイド
侑李が帰ってから1時間くらい経っただろうか。
時計の針は、11時を指している。
昼間ではなく、夜の11時だ。
俺はナースコールを押して、ベッドの背もたれに背を預ける。
9時位から、ずっと調子が悪いのだ。
お腹と腰が痛くて、少しだるい。
侑李がいるときはなんとか耐えることができたけど、今はそれができないくらい痛みが増している。
俺は、瞼をおろした。
こんなときに限って有岡先生はいないし、伊野尾先生も他の患者さんの手術をしているらしい。
誰でもいいから、早く来て……。
心の中でそう叫んだとき、それが伝わったかのようにすぐ薮先生が病室に入ってきた。
薮先生「涼介、大丈夫か?」
涼介「大丈夫……だけど痛い」
薮先生「痛み止め、もうちょっと強いやつにするね。 注射打とっか? 我慢できる?」
薮先生はそう言って、点滴に繋がれたパックを外し、代わりに違うパックをつける。
涼介「大丈夫……うぅ、ったぁ」
薮先生「あと少しで効いてくるから」
先生が腰をさすってくれる。
そのおかげなのか、痛み止めのおかげなのか、しばらくすると痛みが少し和らいだ。
涼介「もう大丈夫。ありがと」
薮先生「うん。あのさ、最近どう?」
涼介「侑李が病室に戻ってきてからは結構調子良かったんだけどね」
薮先生「そうか。落ち着いたら寝ろよ。もうすぐ日付変わるから」
涼介「うん、ありがとね」
俺がそう言うと、薮先生は「おやすみ」と言い残し、病室を出た。
まだ少しズキズキと痛むお腹を押さえて、俺は目を瞑る。
このまま眠ってしまえば、起きたときには治っているんじゃないか?
そう思ったものの、なかなか寝られなかった。
瞼をあげると、俺に繋がれている大量の点滴パックが瞳に映った。
俺、きっと治らないだろうな、なんて。
頭の中に浮かぶのは、いつも最悪のストーリーで。
生きたいとさえ、思わなくなってきた。
別に死にたい訳じゃないけど、生きたいとも思わない。
何も考えず、ただただ生きている。
死んでいるように生きているのだ。
今の俺は、「絶対に治す!」と元気に言っていた昔の俺にどう映るのだろうか。
俺は、再び目を閉じた。
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作者名:J | 作成日時:2020年5月20日 11時