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「何々、病んでますねハノートルさん?」
振り返ってみれば、そう言った彼はベッドの上で胡座をかいてニコニコしながらこちらを見ていた。
それに私は大きな溜め息を吐く。
此奴がニコニコしているときほど面倒な時はないと、私は経験を以て知っているからだ。
「……何、病んでちゃ悪い? レン」
「そりゃあ悪いでしょうよぉ。俺だったら話聴くよってずーっと言ってるじゃんかぁ、な?」
「それはヤダ。こっちも信用ならないってずっと言ってる」
そう言うと彼は「えぇ……悲しいなぁ」と少し拗ねてしまった。
……まるで幼子だ、だから面倒臭い。
「……まぁ、俺だって無理にとは言わないよ。ただ、最近のお前は前より余裕がなくなったように見えるからさ、自分でも気をつけてなぁ」
「……分かった。ありがとう」
……なんて口走ってから2秒、私は軽率な発言に大反省する。
ああ、「ありがとう」なんてなんで言っちゃったんだ……!
「んん? 『ありがとう』ゆうたな?! おー、そうかそうかそうか……!
そうだぞぉ、もっと素直になれい!」
「いーやーだ! てかありがとうなんて言ってないし!」
「言ってましたぁー! 嘘はつかない方がいいぞぉ?」
ニコニコする彼に、私は諦めて「あーはいはい」と気の抜けた声を返し、背を向ける。
確かに、彼は私のことを思ってくれているのかもしれない。
しかし、私が彼のことを何も知らないように彼だって私のことを何も知らないのだろう。
一部を知って分かりきったような気になってしまうのは善くないし、そもそも人というものはどうしても探りきれないものを持っているものだ。
彼は私でないのだから、「私のことを解ってくれ」だなんて元より不可能な話なのだ。
……そう、私を一番に思ってくれる人などこの世界中を必死に捜したって見つかりやしないのだろう。
そんなものは幻影であるということを、私はどこか薄々感づいていた。
それ故に私はこれから先ずっと孤独な人生を歩むのであろう。
――そう、そのはずだった。
お前は誰からも求められないのだと、運命は語ったはずだった。
でもどうやら、神様は気が変わったらしい。
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暁の園(暁夢路)(プロフ) - みしろさん» い、今通知を見てビビり散らしております……か、感謝の極みであります……!! 読みやすいと言っていただけて安心しました、如何せん小生文体が堅くなってしまった人間でしたので(-_-;) コメントありがとうございます、頑張ります!! (2019年11月2日 7時) (レス) id: 2136db8e08 (このIDを非表示/違反報告)
みしろ - 回答パートも嫌味がなくて納得できるし、こんな考え方もあるんだ…!と素直に感心しました…これからも体調にお気を付けて頑張って下さい…!勝手ながら影からひっそり応援させていただきます (2019年11月2日 7時) (レス) id: 950f4c5674 (このIDを非表示/違反報告)
みしろ - 圧倒的な語彙力を感じました…とても読みやすくて頭にすんなり入ってくるので時間を忘れて熟読できました…! (2019年11月2日 7時) (レス) id: 950f4c5674 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁の園 | 作成日時:2019年5月14日 20時