アカシャ・クイール (ページ7)

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……ここは町だったはずなのに。護衛騎士が、いなかったのだろうか。一人も…？流石にそれはないだろうな。割と強い魔物が所々居るから、敵わなかったのかもしれない。
……いや、弱すぎるぞ、そんなんでは。あの程度の魔物くらい倒せよ。騎士と言えるのか？それは。

思案にふけり、ぼ～っと立っていると、

？「おや？クイールのお嬢さんじゃないか。どうしてこんな所に？」

背後から声が聞こえた。思わず剣を抜き、正眼に構える。
後ろに居たのは、くたびれた衣を纏った男だった。

？「おいおい、やめてくれよ。戦うつもりはないんだから。ただ一緒に来てほしいだけさ。」

男は両手をあげて後ずさった。

アカ「は…？」

切っ先が少しぶれる。

「だから、お嬢さん。今あんたには莫大な懸賞金がかかってんだよ。わかるかい？そして、俺は金に困っている。つまり、俺がお嬢さんを連れ帰って金を貰う。で、あんたは人助けが出来る。騎士なんてものをやってるんだから。」

そんなにまくし立てないでくれ、ただでさえ意味がわからないのに。それに、こちらに利点がないではないか。馬鹿なのか？こいつは。
背後をとったなら襲いかかればいいものを…

「私は好きで騎士をやっているわけじゃない。今回は縁が無かったな。」

一刻も早くこの場を立ち去りたくて、背を向けて走る。遠くへ、遠くへ。
でも足音がついてくる。武器を構える音がした。

戦う気しかないじゃないか。長剣をしまい、太腿の短剣をとる。こっちの方が小回りがきく。
振り向き様、剣を相手に向ける。と、相手の眉間があった。

人を殺す趣味はないので、刃を離す。
すると相手はにやりと笑い、飛びかかってきた。
はぁ…

「あまりこっちを舐めないでくれるか。」

隙だらけだぞ。もう少し鍛練してから来いよ。
手をするりとかわして、組伏せる。思ったより簡単に組伏せられたな。

首筋に刃をあてがう。

「今殺すつもりはないが、次は無いぞ。」

短剣の柄で急所を突けば、あっという間に相手の体から力が抜ける。
……すまないな。一応、折らせてくれ。
また追いかけられるのも迷惑なので、足を折る。
ばきりと嫌な音が鳴る。

「申し訳無い。」

ぐたりと地面に横たわる男をそのままに、走ってその場を離れる。
人の骨を折るなんてのは、非道だとは思う。
だが、仕方なかったんだ。自分に言い聞かせ、手にまだ残る感触を振り払うようにして、立ち止まった足を動かし、また走りだした。