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馬鹿みたいなことをしばらく続けたあと、剣の手入れをしようと思い立ち、剣をすらりと抜いた。
正式に騎士になった時、下げ渡された剣。
一点の曇りもない、鋭い剣。
柄の部分に、大陽を見つけた。ペンダントと対になった物を見つけた気がして、嬉しかった。
丁寧に拭ったり、澄んだ水で濯いだり。ゆっくり手入れが出来た。
剣を鞘にしまって、乾いていた服を着て…
あの岩の上でペンダントを見ているうちに、疲れていたのかなんなのか、私は寝てしまっていた。
目が覚めた頃には、とっくに日は落ちていた。
一昨日の満月から少し欠けた月が昇りかけている。
よくこんなにも眠れたものだ…自分の体を不思議に思う。
ぐぐっ…と伸びをしながら、銀の月が映る湖面を見つめた。いつでも静かに凪いでいる。この光景をもう見ることは出来ないのだろうなと思うと、少し切なくなる。いろいろ落ち着いたら、また来るのもいいかもしれないな。
荷物をまとめて、岩から降りる。
ペンダントの件の罪悪感がぶり返し、少し顔をしかめる。せめてもの礼儀、と、敬礼。
はあぁー…これが礼儀になるわけないだろう、私。
罪悪感に押し潰されそうになりながらも、夜の内に距離を稼ごうと立ち上がる。
夜風が心地好く、歩くのにはぴったりの気候だった。すたすたと足早に歩く。
朝の森もよかったが、夜もまたいいな。フクロウの鳴きかわす中を、一人、かさりこそりと歩く。
あまり人に会わない方が性に合うのもしれない。
護衛の時より、ずっと楽しいから。
森の中は、変化が多くて楽しい。小さな変化だけど、鳴きかわす鳥の声が少し変わったり、土が乾いたものから湿ったものに変わったり。あぁ、花も白から紫になっていたな。
一切人工物がないのは良いな。
お、森の切れ目が見えてきた。今度こそ、本当の。
よし、地図上でも正しい位置だな。
この森を出れば、やっと領地を抜けられる。軽く走り、森を抜ける。
広々とした草原が広がっている。木々は、点々と生えているばかりだった。
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作者名:真 @アドミーク | 作成日時:2022年8月26日 17時