お届けシュガースイート！ ページ10
「眠い…」
現在家庭科室から移動して厨房。今度は朝ごはんと昼ごはんの用意を始めている。
フェスの準備期間のため、午前のみで授業が終わる事がせめてもの救いだ。どうせゼペルは手伝えないし…帰ったら寝る、絶対に。
それにたまごも必要だしこっちもこっちで支度を始めていく必要がある。担任に言われた二日間の競技とかどうすんだって話で。
ht「あれ、A?」
暖かな声に顔を上げる。そこには首にタオルをかけ、野菜の入った籠を持つヒトランだった。
「先輩…。おはようございます」
ht「おはよう。…なんだか久しぶりだね、朝に会うの」
どこか嬉しそうなヒトランの姿に、俺の疲れが軽くなる感覚がした。
彼は野菜置いて、俺の隣へと来る。
ht「顧問から聞いたよ。犯人がまだ見つかってないって…。大丈夫だった?」
魔物は倒したけれど…、そう言って拳をギュっと握る彼。
こちらから会わない様にしましょうと言っていたにも関わらず、かなり心配してくれてたようだ。
ht「…今度何かあった時は、頼ってね」
内容によっては俺1人で解決しないとダメなこともあるんだけどなぁ…。しかし、彼の言葉はとても嬉しかった。
「わかりました。また何か起きた時はよろしくお願いします」
ht「約束だよ」
彼は小指を前に出してくる。
指切りもこの世界に…というか東の国にはあるらしい。本格的に、日本に文化や国柄近い気がしてきた。
「はい、指切りです」
ht「破ったら毬栗10個のますからね」
(ごめんそこは違うしそれはムリだ)
結んだ後に言われてしまい、破れない約束ができてしまった。
「あ、そうだ」
ちょうど思い出して、冷蔵庫に入れていた紙袋をガサガサと漁る。
その中からひとつを取り出した。
「お詫びと言ってはなんですが、カップケーキです」
ht「これ、Aが作ったの?」
「はい。お嫌い、でしたか?」
ht「ううん、全然。それにAが作ってくれた物だし」
受け取った彼は、それはそれは大事そうにカップケーキを包む様にして持つ。その姿につい笑みがこぼれた。
「そんな、ごく普通のカップケーキですよ」
ht「作って貰うことなんてそうないからね」
「え、言ってくださればいつでも用意しますよ」
ht「…じゃあ今日夜ご飯も一緒に食べに来てもいい?」
「……えっ?」
悪役ポジの俺に言うセリフじゃないこと言われてしまった。
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作者名：あんべべ | 作成日時：2021年9月26日 19時
