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「…では」
いただきます。全員が声を揃えたあと、其々が夕食を口に運んでいく。
俺はショッピの隣に座り、味噌汁を啜っていた。
今日の夕食は東国風だしを使った親子丼に豆腐とわかめのお味噌汁。チョコの大量摂取で胃が弱っている可能性を考慮して鶏肉は少なめ、かつ味付けも薄めにした。
ht「Aって親子丼も知ってるんだね。もしかして海鮮丼やカツ丼とかも…」
「はい、存じてますよ。どれも美味しいですよね」
gr「貴殿の親戚に東国人でもいるのか?」
「いえ。ゼペル家は代々、子どもの数が少ないですし…」
この場では重く言いづらい内容に口をつぐむ。
"ゼペル家は早死する家系"
前世も現世も変わらず、どの家系にも癌を発症しやすい、やたら心臓が強い、認知症になる確率が低い、記憶力が高いなどそれぞれ特徴がある。
その中でもゼペル家は若い頃に死亡、つまり魔力の完全喪失をしてしまう割合が特段高い。ゼペル家の血を受け継いでいた父も、そして嫁いだ母もそこに含まれる。
どうやらゼペルに嫁ぐ者も例外なく、早くに亡くなるケースが多いそうだ。子供を作る過程で必ず身体を交わるため、恐らく体内に闇属性を含む細胞が入ることが原因だろう。
そんな早死にする家系に別の国の親戚などいるはずもなく。
(この場で話すには重すぎるし、ゾムいるし。何よりまだ魔法の解けてない2人がいるのに話すのは…)
「俺も本で読んで知っただけです。うちの領地って、東国と繋がりのある港から反対の位置…しかも周りはダンジョンや山に囲まれてて。態々訪れて交流しに来る方はいないと思います」
ut「え、Aちゃんそんな場所に住んでるん?」
「はい。確か地図には載ってないらしいですね、あの場所」
ゼペル家の所有する土地と近くにある街は、王国領土の地図に入らないよう細工されていると聞いたことがある。
そのため国王家の会長以外は知らなかったようだ。皆驚いていた。
gr「その内偵察で行ってみるか」
悪巧みをしていそうな会長が言った。
os「では私が代わりにAさんの領地に行ってもいいですか?」
zm「1人で行こうとすな。俺も行く」
ht「いやいや、2人とも行くの大変だろうし身分のない俺が行くよ」
「あ、あの…」
os「ダメですか?Aさん」
定期的に行われる口撃戦に無事巻き込まれ3人を宥める。別に3人とも来てくれたら嬉しいのだが…。
「…えっ」
ふと服の裾が掴まれる。
掴まれた先を見ればショッピが涙をこぼしていた。
shp「どう、して…」
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作者名：あんべべ | 作成日時：2022年12月1日 19時
