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無事にあの場を誤魔化し、いちど庭園で休みたいと言ったオスマンの護衛を名乗り出てテントを後にした。あの場に会長だけ残しておくわけにもいかず、なんなら変に情報を得ようとしかねないため彼はヒトランに託しておいた。
「あの会長も鬼の威圧には即降参するのですね」
os「ええ。にしてもあの怯えようは…ふふ」
思い出して笑うオスマンの笑顔にこちらの表情筋も緩くなる。周りに生徒も人もいない分、互いに気を張らず隠れる事もせずリラックスして歩くことができるのかもしれない。2人でのんびりと歩ける学院内は妙にレア感があった。
学院のこと、生徒会メンバーのこと、紅茶のこと。話に花を咲かせながら2人で歩く。彼と話していると先ほどまでの山積みの問題が軽くなっていくようだ。
(…多分、体制を整え直すタイミングなのかもしれない。それこそ利用する教師の選択も)
表ではほのぼの喋り頭の中では思考をフル回転。なんとも悪役らしい、そう思う。
os「Aさん?」
「どうしました?」
os「考え事してそうだなと思いまして」
「まぁ先ほどまでバタバタしてましたからね」
os「…ご協力できることがあったら、言ってくださいね」
詮索してこないのはとてもこの人らしい。ありがとうございます、とお礼をしてまた別の話を始めた。
「そうだ。オスマン様」
庭園近くで俺は立ち止まる。すぐに気付いてオスマンも振り返った。
os「どうかしましたか?」
腕に下げていたバスケットの中から、緑のリボンのついた箱を手に持つ。そして彼へと差し出した。
「ハッピー……ウィンターカーニバル、です」
ゾムに別でチョコを作っていたように、彼にも別人格分も含めちゃんと作っていた。本当は店に来た時に食べてもらってハートを貰おうとしていたのが、会長のことですっかり渡しそびれていた。
別れ際になってしまったがなんとか渡すことに成功。
(うっかりバレンタインと言いかけた……てあれ?)
何かしら反応があると思ったのだが彼方から反応がなかった。さっきまでチョコを何度も食べたのに今渡すのはタイミングが悪かったのだろうか。
「やっぱり、先ほど召し上がられてましたから要らないですかね」
os「いえ違うんです!その…」
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作者名:あんべべ | 作成日時:2022年12月1日 19時