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「せんせー大丈夫ですかー?」
レウはどこか上の空。生徒から隠れた際にちょうど良いといつもの魔法をかけていたのだが、よほど聞いてしまっているらしい。
足取りも覚束なく俺の声には辛うじて首を振る程度になってしまった。
それでも全てのポイントを回り終えようと頑張っているところはなんとも遊び心をくすぐってくる。
講義室に戻ったらより魔法をかけてあげよう、そう思った。
re『…Aさっ……手つないでて…』
「はいよ」
瞳を見れば濃さの増した黒いハート。
先程のからずっと消えずに存在しているそれに夢中にさせていることを理解する。
ぐつぐつと沸騰するほどに暴れる支配欲に高揚感を感じながらも、最後のポイントへと到着した。
懐中電灯を持っている手を俺が持ち上げて、印が刻まれるまで静かに待つ。じわりじわりと薄い水色と少し霞んだ赤の2種類の色によるケダマ印が完成。
「終わりました?」
re『うん…』
理性が効かなくなっているのか、レウは頑張ったよと言って抱きついてきた。
静かにミドリへと魔法カメラの改竄を依頼。
「ステイ。講義室戻ってから耐久コースにしますか?」
re『や、やだ…。それキツイって緑くん言ってたもん』
じゃあ早く行きますよ、と懐中電灯を奪って手を引く。流石に灯なしでは視界も悪いため懐中電灯の電源ボタンをカチと押してつけようとする…のだが。
「つかんのですが」
re『え、そんな事ないよ。俺が慌てた時にも制御できるようにって、すごい簡単に設定されてたはず』
振っても何も無し。魔力を込めても変化起きず。
またスイッチを押しても何もない。
カチカチカチカチ方カチカチ…
re『壊れちゃ………え?」
「どうしたんですか?」
上、と言われて見あげればそこには烏、烏、烏。気持ち悪いくらいに沢山の烏が空を埋め尽くしていた。普段聞くようなカー、という鳴き声も出さずに、ただ静かにこちらを見ていた。
そしてその奥に見える丸くて赤い宝石…訂正。
あれは宝石ではない。
「月が赤くなってる…?」
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作者名：あんべべ | 作成日時：2021年12月1日 18時
