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忘愛症候群:愛する人の事を忘れる病気
発症する理由は分かっておらず、治療法は
’’愛する人の死’’のみである。
記事を読んでいくと見つかったその言葉。
愛する人の、死...。
つまり、彼奴は俺が死ねば、俺を思い出す訳か。
...俺が、いなくなれば...？
「なんだ、簡単じゃないか。」
そう、自嘲気味に笑って、スマホを机の上に置いた。
そしてそのまま部屋を出て、屋上に向かう。
柵を越えて縁に立てば、冷たい風が体顔を撫でる。
思っていたよりも高いな。
...1歩、踏み出せば。
ここから後1歩、足を前に進めれば。
そうすれば、俺は落ちて。
そうすれば、彼は俺を思い出して。
そしたら...俺はもう、ここに居ないわけで。
彼に思い出されても、俺は傍には居られないのか。
...それは、嫌だなぁ。
「...忘れられたままなのも、嫌、だな...。」
忘れられたまま過ごすよりも、思い出されて死んだ方が、きっと幸せかな。
...考えるのは、終わりにしようか。
足を1歩、踏み出した。
前に進めた足が空を切る感覚がする。
＿そしてそのまま、体は宙を舞った。
「大好き。」
地面に体がつく直前、口は愛の言葉を紡いだ。
＿＿＿＿
＿＿
＿
頭がふわふわする
目を開けても見えるのは暗闇ばかりで。
ここは夢の中か、なんて勝手に納得した。
ビルから飛び降りた筈の体は動かない。
それどころか、痛みも感じなかった。
人は死にかけてると痛みも感じなくなるのか、なんて呑気に考える。
そろそろ死ぬのかなぁ...。
もうちょっと、話したかったな。
もうちょっと、一緒に居たかった。
でもまぁ、仕方ないか。
彼奴は俺の事忘れた訳だし。
俺の事を覚えてない彼といたって、きっと苦しいだけだ。
...あぁでも。
最期に名前くらい、呼んで欲しかったな...。
前みたいに、あの声で。
俺の名前を、呼んで欲しかった。
...もう、叶わないけれど。
「＿ル！＿＿！」
誰かが必死に呼びかける声が聞こえた。
すっかり麻痺してしまった聴覚では、それが誰の声かも判断できない。
手も握られているような気がした。
けれど、握り返すことは出来なくて。
...死にたくないなぁ...。
「好きなんだよ...目覚ませ...あほ...っ」
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作者名：ローゼ | 作成日時：2019年6月22日 7時
