夜明け前の話 ４ ページ21
「建設的な関係、ねえ」
麻生は苦笑を深める。
「しおりちゃんには向いてないと思うけど」
『お前に俺の何がわかるんだ』
憮然として言った。
放置された劣情は萎み、残骸だけが溜まっていく。
そうして不完全燃焼な体を持て余すと、宮園は夜の街に繰り出した。
手っ取り早く発散できる相手を求めて、夜を彷徨うのだ。
本当は局内で相手を見繕うのが一番楽だ。
でも通信網にまで入り込める麻生の視線はどこにでもあって、
気兼ねする必要はないと頭では思っていても、興が乗らない。
真っ先に思い浮かぶ斐之嵜とも、なんとなく切れてしまっていた。
『その気になれば、まともな恋人の一人や二人はすぐに作れるはずだ。俺は案外、モテるんだぞ』
「まあ、そうだろうね」
『あっさり肯定するなよ。逆に恥ずかしいだろうが』
「しおりちゃんが魅力的なのは知ってるもの」
『その魅力的な俺の誘いより、書類を優先するのはどこのどいつだ』
自分で持ってきた書類だという都合の悪い事実には蓋をした。
麻生が日頃からちゃんと仕事をしていないからこんなことになるのだ、と責任を転嫁する。
『欲求不満で死ぬかもしれない』
切羽詰まった宮園の嘆きを麻生は笑う。
ペンを手に取り、椅子を引いた。
「すぐに終わらせるから、その辺で待っててよ。食事にでも行こう」
耳に馴染んだ台詞に
『わかった』
と首肯しながらも、内心では思う。
――そう言ってお前が約束を果たしたことなんて、ただの一度もないじゃないか。
麻生恭一郎とはそういう男だ。
呆れと諦めがごちゃ混ぜになった気持ちで、宮園は投げやりな嘆息をこぼした。
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作者名：茄恋 | 作成日時：2017年12月21日 0時
