MISSING TWINs Ⅲ (ページ10)

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ⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅧ ページ10

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ー…いい天気…ー

透き通るような青だけを視界いっぱいにして、私は病院の上を漂っていた。
こうなって初めて、幽霊という者を見た。
病院に居る誰もが和やかで、すれ違う際に必ず声をかけてくれる。
小さな子供からかなりのご年配まで、沢山の人が院内を闊歩していた。

ーあ、芹さんー

ーあー、水戸部さん。どーもーー

私の２つ上の年齢で亡くなったと言う、傷みもない黒髪がトレードマークの女性。
水戸部さんは生まれつき体が弱く、出産の際に命を落としてしまったらしい。
旦那さんはとても悲しんだけれど、４年前に奥さんを貰い、娘さんもとても懐いているらしい。
それはなんだか寂しいですね。と口に出したら、水戸部さんは笑って良かったと答えた。
いつまでも自分を引きずって、そのせいで娘さんに寂しい思いをさせたら許せなかったと。
しばらく見守り、先月この病院に戻って来たらしい。

ーおー、芹ちゃんかい。いい天気だねぇー

ー結城のおじいちゃん。こんにちはーー

腰を折ったままふわふわと歩く結城のおじいちゃんは７７歳で逝去したのだと言う。
２０代の時から下半身不随となり、家族の手を煩わせながらそんな年齢まで生きてしまったと苦笑していた。
最期は癌を患い、家族に見送られたと話してくれた。
住まいは隣町らしく、毎日歩いて家族の様子を見に行っている。
歩けなかった年数を歩き尽くし、家族の、曾孫達の笑顔を好きなだけ焼きつけてから逝くつもりらしく、この病院でも古株の１人。
最初は悲しい顔をしていた家族が、少しずつでも明るい顔をしていくのがとても喜ばしかったと話す横顔はとても優しかった。

ー芹ねぇちゃーん！ー

ー奏多(ｿﾅﾀ)くん。お散歩ー？ー

ーううん！旅に出てくる！ー

ー分かったー！おじいちゃん達に言っとくねー！ー

ーよろしく！！ー

元気に病院を後にした奏多くんは、事故に遇い病院に運ばれたが、処置が間に合わなかったらしい。
両親の泣き顔が辛くて、一緒になって大泣きしていたらおじいちゃん達に宥められたと話していた。
離れ難くてずっと両親に憑いて回っていたが、最近産まれた妹が可愛くて仕方ないようで、時々幾つも県境を越えた自宅に旅に出る。
あまり長く病院を離れてしまうと怖いものが寄ってくるようで、必ず戻って来ては家族の自慢を皆に話していると伝え聞いた。
そんな皆に言われた言葉。

ー生霊なんだねー