Another Epilogue ページ39
「そろそろいくか」
「芹は？」
「そこに居るから心配すんな」
何もない空間を指差した黒髪の青年を、金髪の青年が怪訝な顔で見つめる。
「…どこの世界でも、芹はずっとお前の隣に居たんだよ」
「っ、」
くしゃりと顔を歪めて息を詰めた金髪の青年が小さく「そっか…」と口にした。
「そろそろ返してやれ」
「うん。芹が居るなら、もう大丈夫」
ふわりと抜け出た白い靄に、ずっと連れ添っていた白い靄が融けるように近づいた。
もう大丈夫だろうと黒髪の青年はその２つを両の手で包み込み、胸元まで引き寄せた。
必ず正しい場所へと連れ帰るという、青年なりの覚悟の現れだった。
「お前“ら”にも迷惑かけたな」
＝別に、迷惑なんて思ってないよ。むしろ感謝しているくらい＝
「感謝ってなんだよ。俺は身体奪っただけだぜ？」
＝それでも、…に心の整理をつける時間をくれた。ありがとう＝
「どういたしまして？でいいのか…？」
＝いいんだよ。…の気持ちだから、素直に受け取って＝
「そうするわ」
苦笑を洩らした青年の独り言。
それを金髪の青年がじっと放心したように眺めている。
きっと“この世界”の武藤大我なのだろうと心の中で呟いた青年は、それを邪魔せぬようにと息を潜めた。
「京本」
「はい！」
「なんで緊張してんだよ。ずっと一緒だったろ」
しどろもどろで返答する金髪の青年を笑いながら、黒髪の青年はひどく優しく微笑んだ。
大切に抱えた２つの白がゆらゆらと揺れている。
「この世界の俺“達”の事、よろしくな。幸せになってくれ」
「う、うん」
満足のいく返答だったのか、黒髪の青年から薄い白が滲み出す。
薄い白は２つの寄り添い合う白を護るように包んで、闇に染まった空へと向かう。
それを見送る金髪の青年の肩を優しく叩いた掌に驚いて振り返れば、そこに居た黒髪の青年はその口を開いて告げた。
「これからよろしく、京本大我。僕が“武藤大我”」
「よろしく、」
「そして、“私”が“武藤芹”。この世界ではお兄ちゃんと身体を共有しているの」
まるで笑い方、話し方の違う人物に、金髪の青年はその言葉を信じる事しか出来なかった。
その後の行方を知るのは、この世界の登場人物にはいない。
ーーFin.
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佐藤龍我のぶりぶりざ○もん
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作者名：Fin. | 作成日時：2019年5月24日 16時
