�将将将将将将将将将将将将� ページ29
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「……っ、ぅ…」
「……苦しいよ。大我くん…」
背後から抱き締めていただけるのはとても嬉しいのだけれど、お兄ちゃんと大我くんの背丈は似たり寄ったりなもので、抱き締めると言うよりはしがみつく、とするのが正確なような気がする。
しがみついて肩に額を預けた大我くんの体は震えていた。
小さく「怖かった」と聞こえた時は、悲しい訳でもないのに涙が溢れそうになった。
怖くなかった訳じゃない。
覚悟はとうに決めていて、私が死ぬ事は怖くなどなかった。
痛みなんて、一瞬だけだと知っていたから。
怖かったのは、お兄ちゃんを道連れにしてしまう事。
恐れたのは、大我くんの目の前で事故を起こしたなら、また繰り返されてしまうかもしれなかった事。
大我くんの震えが伝染したように、体が震えだした。
「…ふっ、…うぅ…っ」
「ょ…っ、」
泣き出した私を宥めるように、胴に回っていた掌が濡れてぺたりと萎れた髪を撫でた。
雨で濡れ鼠になった上に、恐怖で血の気まで引いて震えているのに、背中から伝わる温もりが生きているのだと知らせてくれた。
２人して声を殺して、雨に涙を隠してもらいながら泣き続けた。
どれ程の時間そうしていたのか分からない。
やっと涙が落ち着いて来た頃、大我くんはまだ泣いていて少しだけ呆れた。
子供みたいに泣きじゃくる大我くんを剥がして、その手を引いて会場を目指した。
寒いし、下着まで濡れそぼっていて気持ちが悪い。
大人しく手を引かれる大我くんの目元から、空いた手が離される事はなかった。
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作者名：Fin. | 作成日時：2019年5月24日 16時
