MISSING TWINs Ⅲ (ページ23)

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ⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅠ ページ23

お兄ちゃんの言葉は頭をフル回転しても見当もつかず、人垣を掻き分けて流れていく風景をただひたすらに眺めていた。

「…“次”こそ、絶対芹の幸せを見届けたい。その為に、俺は“死産”を選んだんだから…」

ー死、産…？ー

そこでやっと迷宮入りしていた思考が、パズルのピースを嵌めたようにカチリと音をたてた。
そんなはず無い。
だけど、お兄ちゃんは“次”と言った。
“次”があるという事は“前”があったはず。
“前”があったなら、それはどこ？
お兄ちゃんは“死産”と言った。
幸せを見届けるために、自ら選んだと。
目が覚めたら、居るはずの人が居なかった事がある。
それは、本来の私の世界ではなく、とても、とても悲しい結末を辿ったあの世界。

ー“依存”し合っていた…私と大我くんの…ー

「やっぱり、俺の記憶覗いてたか…。辛かったろ、すまん」

ー記憶、覗いてたの？私…でも、この間は自分の意思で動けたよ？ー

「お前、俺の所に１番に来た芹だよな？」

ー訊かれても分かりませんー！ー

「…全ての場所で、違った芹が居た。俺達がここの前に居た世界の芹と同じ芹が、ずっと俺と居たことを俺は覚えてる。まだ、本来の世界に留まっていた時に…」

あの悲しい世界の“武藤大我”だとお兄ちゃんは言った。
水子になって姿形さえ象れない白い靄だったお兄ちゃんを、私が“武藤大我”だと信じて大我お兄ちゃんと呼んだ。
そして、私が呼んだその名前がお兄ちゃんを“武藤大我”にしたのだと、私と大我くんを探しながら明かしてくれた。
にわかには信じられない事なのに、私はそれを受け入れる事を選んだ。
既に信じ難い出来事なら２０年以上起きている。
この間の世界に本当に行っていたのならば、それは４０年まで越えていた。

「芹」

思い耽る私の思考を遮るように、お兄ちゃんは告げた。

「俺は、そろそろ終わりたい。本当の妹の幸せを見届けて、眠りたい。もう何度も繰り返してきたんだ。アイツら２人の顔面ぶん殴って目を覚まさせて、終わらせたい。……巻き込んでごめんな…」

ーお前はちゃんと元の世界に返すからー

お兄ちゃんのか細い決意が私の鼓膜を揺らした。
いつも暖かかったこの場所が、冷たい海のように沈んでいった。
本当はずっと苦しかったのだと、本当の気持ちを隠して暖かな場所をくれていたのだと、その優しさに胸が震えた。