MISSING TWINs Ⅲ (ページ21)

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お兄ちゃんのバックの最前列。
そこにはSixTONESの姿があった。
私の居ない間に、お兄ちゃんもSixTONESも、そして他のグループも、それぞれ名を上げていた。
見下ろした客席に並ぶたくさんの名前。
アリーナの最前列に私の姿があった。
６人並んで楽しそうにしている姿を見ていると、これから起こり得る悲劇なんて想像も出来ない。

『じゃあ、おやすみ』

アンコールを終えたお兄ちゃんが、客席に向けてそう口にした。
アナウンスの響く会場は、興奮冷めやらぬ観客が少しずつ捌け始めていた。

ーお兄ちゃん、早くLINE！ー

ーはいはいー

「武藤くん、ツアー最終日お疲れ様」

「お疲れ様です。全ての公演に着いてきていただいて、本当に助かりました。勝手知ったるスタッフが居ると居ないでは大違いだと前回のツアーで思い知ったので、東さんが来てくださって本気で胸を撫で下ろしましたよ」

「武藤くんは煽てるの上手いねー」

「本心ですよ」

ーお兄ちゃん！ー

ー少し待て！ー

ーわんっ！…って待てないのー！！ー

スタッフと立ち話を始めてしまったお兄ちゃんを必死で急かして、その後も会う人会う人に声をかけられ、スマホが置いてある控え室に辿り着くのに要した時間は、実に３８分。
過ぎていく時刻に気持ちは急くばかりで、幾度もお兄ちゃんに「早く早く」と繰り返した。

ー何なんだよ…ー

ー早く！！ー

ーほら、送ったぞー

既読がなかなかつかない。
今頃、会場の外に居るだろう私は何も知らずに笑っている筈だ。
ほんの数分でいい。
足を止めてくれれば、防げるかもしれない。

ー早く、早く見て！ー

ー…芹…、お前さ…ー

「武藤お疲れー」

「おー優吾達もお疲れー」

控え室の扉に軽いノック。
返事も待たずに、SixTONESのメンバーが荷物を肩に掛けて姿を現した。

ーそうだ！大我くんに電話してもらって！ー

ーはぁ？ー

「あれ？大我は？」

「荷物樹に押しつけて走ってった！」

「後で戻るって言ってたけど、すごく焦ってたみたいだったよ」

元気いっぱいに慎太郎くんが樹くんを指差し、それをジェシーくんが首を振りながら真顔で遮る。
ごめんごめんなんていつものやり取りを背景に、北斗くんが苦笑した。

ー焦ってた…？ー

「あいつ…まさか…！」

ざわりと波立ったお兄ちゃんの心。
事態を飲み込めない私を置いて、お兄ちゃんは控え室を飛び出した。