MISSING TWINs (ページ37)

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ⅩⅩⅩⅥ ページ37

「今日はちゃんとベッドだ…」

朝一で安堵の息を吐く。
これで誰にも迷惑かけずに済む。
そんな生活がもう２年も続いていて、私は高校生になった。
芸能科もある学校は理解があるので、仕事であれば課題提出で単位をくれる。
ありがたい話なのだが、私の問題は頭じゃない。
一度通り過ぎてきた学業なんて、別にどうって事はない。

「シャワーあびよ…」

袖を通すのは男子の制服。
鏡の中にはすっかり大人びた武藤大我が佇んでいる。
今日は何もありませんように。
仏壇にそっと手を合わせ。
通い慣れた道を歩く。

「武藤くんおはようー」

「おはようございます。加藤さん」

「…」

「どうしました？」

「ううん。今日は紳士キャラなのね」

「紳士キャラって…」

「クールなのも良いとは思うけど、私は断然今の武藤くんの方がいいわ。にこりともしないもの、あのキャラの時」

「あはは…」

私、二重人格だったの？
まったく覚えがないのだけれど…。
こちらの困惑を露とも知らぬ、お隣さんの加藤さんはそんな力説をつらつらと並べている。

「普通そういうの本人に言いますか？」

苦笑を添えて意義を申し立てた私に、

「寧ろ、本人に言わなきゃ意味無いでしょ？」

と歯を見せて笑った。
清々しいまでの加藤さんは、正直好ましい。
友人として…と付くのは致方ない事だと許して欲しい。

「そう言えば」

「どうかしました？」

「武藤くんって課題やって来た？」

「昨日加藤さんが連絡くれたので、昨日の課題までしっかりと済ませましたよ」

「分かんないとこあったの！写させて！」

「教えますから自力でやりましょう」

「うぇー、武藤先生の鬼ぃー」

まるで私自身が昔を追体験しているように思える彼女という存在は、友達さえ失った私の救いになっている。
本人には言えない感謝を胸に抱き、私は教科書を手に隣へと顔ごと体を向けた。

「さぁ、やりましょうか。加藤さん」

「ひぃー」

私達のやり取りに笑う教室に浮かんだ安堵の色に、クールな私はいったいどんなものなのか…と不安を持て余した。