�将� ページ16
「はぁ…」
居残り練習をしていたが、１度ケガをしそうになった為、切り上げた。
レッスン室の隅に片足を立て、片足を投げ捨てた状態で壁に背を預けて天井を仰ぐ。
何だか訳が分からない。
あの後、ふざけて
「芹なんて居たっけー？」
「１番はお兄ちゃんだよー。でも京本くんのサイン欲しいのー」
「あらあら、悔しいからって芹ちゃん苛めないの」
「昔から本当の兄妹みたいに仲良しだものね」
芹が存在してなかったことを仄めかせば、返ってきたのは身に覚えのない歪んだ世界の情報。
私には芹だった頃の武藤大我の記憶も無ければ、こちらに来てからの芹と名乗る女の子の記憶も無い。
覚えているのは、自分の事だけだ。
「頭痛い…」
分からない。
整理が出来ない。
「分かんない…助けて…」
「芹？」
１人の筈の室内に響いた他者の声にびくりと肩を弾ませた。
助けて欲しいと真っ先に思い浮かべた相手の声に、安堵と戸惑いが交錯して、自分の感情１つ上手く隠す事が出来なくなっていた。
「大我か…忘れ物？」
「助けてって何かあったの？俺で良ければ聞くよ？」
「あー聞かれてたか…」
「俺ら双子って皆に言われるくらい仲良いんだからさ、相談して？芹の事支えたいし」
「あははっ、その口説き文句俺に向けるものかー？」
「茶化すなよ！」
「んー本気大したこと無いんだってー」
「大したことある顔してる」
「あー…」
「“大我”」
大我くんが今の私の名前を呼ぶ。
かといって、こんな内容は信じてももらえないし、落ち込むに相応しい内容をでっち上げた。
「好きな人出来たんだ…」
「うん。芹に惚れない子は居ないからコクったら？」
「出来ない。その子を苦しめたくない」
「苦しむ訳無いじゃん」
「その子他に好きな人居るから、絶対苦しませるんだよー」
「そっ、かぁー」
「そーそー。でもさ、苦しいの。伝えたいけど、伝えちゃいけなくて。だけど、抱えてるの辛くて。言っちゃえば楽になるかな？っても思うけど、必ずその子を困らせる。そんな自己満足の為にその子まで苦しませるの嫌なんだよー」
「…いつも思うけど、芹ってスゴい臆病だよ。そんなに他人の事考えられるのはイイコトかもしれないけどさ、それじゃ一歩も動けないじゃん」
「大我みたいにいかないよー」
「言えないのが苦しい？」
「んーまぁ…」
「よし！俺をその子だと思ってコクったらいい！」
「はぁ？」
何でそうなった？
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佐藤龍我のぶりぶりざ○もん
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作者名：Fin. | 作成日時：2019年3月28日 1時
