24 ページ27
じっとり重い空気、流れるように降り注ぐ雨は永遠に降り続くかのようだった。
何もかもを濡らすまで、いつまでも降り続ける。これが飴だったら良かったのに。ああでも、飴は硬いから痛いのかもしれない。
じゃあなんだろう、わたあめだったらふわふわかな。美味しくて甘くて、幸せの香り。…いや、ベトベトしちゃうか。
ぼんやりと天へ手を仰ぐと、そのもみじ型のなんと小さな事か。他人事のように「ああ、またこの夢か」と納得する。
地表はぐっしょりと濡れていて、私はいつものように雨宿りをしている。隅の方で身を縮め、何かから守るように。
木も高速道路も畑も車も家も犬も、全てがまんべんなく雨を吸いこみ、世界は救いがたい冷ややかさに充ちていた。
『A、起き＿＿』
＊＊＊＊
「え」
「…？どうしたのAちゃん」
大きな声が夢とは思えないほど耳いっぱいに響いて…目が覚めた。ぐっしょりとTシャツは水分を含んでいて重い。
＿＿これだから雨は嫌い…。
額に着く髪を流して、声の方を見た。
「…出久」
「うなされてたけど、大丈夫？」
「なんか、変な夢を見たの」
「夢？」
ちょうど外からは小さい雨音が聞こえる。夢と現実が共鳴し合っている事に若干の戸惑いを覚えつつ、私は「…ううん、なんでもないの」と話を逸らした。
それにしても、傘を差してくれた子供の声。なんだか妙に親しみが持てた。
＿＿私は、その声の主を知ってる…？
夢というものは記憶の整理…言わば脳のアルバムをめくっている様なもの。過去起きた出来事でも知っている人物が出ても何らおかしくはない。……でも、引っかかるのは、
＿＿＿私、小さい頃なんて優しくされた記憶ないよ…。
ただでさえ取り巻きを作り常にグループのトップに立っていたかっちゃんを筆頭に、数々の男女問わない子供達にいじめられてきた。
そんな私に優しい言葉をかけてくれる…ましてや傘を差し出してくれる人なんて絶対に居ない。
＿＿やっぱりあれは何も関係ない夢？
意識の混濁した中で見たものだから、やはり思い過ごしかもしれない。一人でウンウン悩んでる私を見て「あははっ」と笑った出久が外をちらりと見て、
「そういえば、あの日もこんな雨だったね」
と上々に語った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 832人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
トオ(プロフ) - あの、もう一気読みしました…好きすぎて……こんな作品作れるなんて凄くないですか？めちゃくちゃ尊敬してます… (2022年8月21日 10時) (
レス) @page18 id: 316392659a (このIDを非表示/違反報告)
43yomi1(プロフ) - あ、滅茶苦茶好きです…！ (2021年4月18日 5時) (レス) id: 674eb44c7b (このIDを非表示/違反報告)
*紅_あか* - わわわ！わー！！好きです！！！すっごい好きです！！！！あの…なんて言うんだろう…表現の仕方？とストーリーと夢主の思考？を行動に写して、わくわく(…かな？)してしまうほど好きです！！！！！ (2021年4月8日 20時) (レス) id: d344c61285 (このIDを非表示/違反報告)
春風 恋(プロフ) - みかさん» ひゃーっっ、ありがとうございます！！皆さんへどんでん返しできたかな？とニマニマしながら執筆してます！笑 (2021年4月7日 13時) (レス) id: 41a6911d5c (このIDを非表示/違反報告)
春風 恋(プロフ) - チヒロさん» 分かりますかっこいいですよね切島くん(最推し) (2021年4月7日 13時) (レス) id: 41a6911d5c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：春風 恋
| 作者ホームページ：http://urana
作成日時：2021年3月27日 13時
