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待つのは苦手じゃないけど、暇だな。









ふとテラスの脇に飾りのように置いてある消火栓が気になって、近付いてまじまじと見た。









「おもしろい形………」









バッグからいつも持ち歩いている小さなスケッチブックを出して、消火栓を描いてみる。









アイデアはどこに転がっているか分からない。









「うまー」









耳のすぐ近くで聞こえた声に私はビクッと肩を揺らして振り向いた。









「うまいね、絵」









隆二さんは私の後ろから覗きこむようにスケッチブックを見ている。









「ありがとうございます。もう良いんですか?あちら………」









「うん、帰ろ」









「か、帰るんですか?」









「うん」









私は何のために連れてこられたのでしょう。









「先に出て待ってて」









「あ、はい」









言われた通り先に外に出たら、何だか急に寒くなった気がした。








何となく覗いた腕時計が7時半丁度だったのが、今も何故かはっきり記憶にある。









「うるさいからマジで!!」









捨て台詞を吐きながらお店から出てきた隆二さんが、笑いながらドアをしめた。









「うるさいよねー、本当ねー」









隆二さんはボソッと呟くようにそう言って「あっち」と指差した。









その“あっち”は、帰る方とは反対。









「どっか行くんですか?」









「何か予定あんの?」









「ないです」









「飯行こうよ」









……………やばい、まじでタイムワープしたかも。









「今!食べてたじゃないですか!」









「ちゃんと食べたいんだよー」









「ちゃんと…………」









お話ししてて、あんまり食べられなかったのかな。









「何が食べたい?」









「んー、ピザまん」









「それ飯じゃないでしょ?」









「食べたいのって言ったから………」









「じゃあ、それはあとでね」









“これから”と“あと”がある。









私は下を向いて、笑みを隠すためにために唇を噛んだ。

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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年1月4日 20時

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