彼女という人。 ページ5
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「顔のコンディション相当悪いよ」
岩田さんが私を見下ろして、ちょっとだけ笑ってる。
「寝てなくて………笑ってるってことは何か知ってるんですね………」
“こういう男だからね”事件………とか。
「隆二さんに何されちゃったのー?」
「………知ってるくせに」
自分でも眉間に皺がよってるのが分かる。
きっと………多分……“こんなことしてやったんだぜー”って男同士で笑ってたんだろな。
「“困る”って」
「え?」
「恋愛する気ないのに、困るって」
バンダム級にボディーブローくらった位に痛い一言。
私の気持ちに対する返事は好きでも嫌いでもなくて、苦情に○が付いて却ってきてしまった。
「迷惑ってことですよね……」
「迷惑じゃなくて“困る”」
「一緒じゃないですか!」
「俺にキレんなよ!……誰か良い奴紹介してあげるよ」
私の肩を両手で叩いて、岩田さんは足取り軽く去っていく。
取り敢えず……恋愛する気ないって言うのは本当らしい。
だけど…………
「おはよう」
ちょうど事務所に入ってきた隆二さんは
「おはようございます」
私の声に軽く浅い会釈をしただけ。
関わらないで、と言われてる気がして私は目を伏せた。
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今日という日は、どうも私を痛め付けたいらしくて
別に追いかけたわけでも、狙ったわけでもないのに、彼と事務所から出るタイミングが同じで
エレベーターに二人で乗るはめになってしまった。
ゆっくり降りていく箱の中。
「はぁ…………」
彼がため息をついた。
何となく、二酸化炭素を吐き出したくなったのか
何か嫌なことがあったのか
私と二人の空間が“困る”のか。
顔色を伺うように彼を見上げたら、1秒だけ私を見て
「はぁぁ〜………」
さっきより深いため息をついた。
私が原因みたいです。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2015年10月2日 19時