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眩い光が一直線に硝子へ向かったかと思うと、光は焦らす様に、ゆっくりと消えた。すると部屋が少しづつ明るくなる。
誠が窓硝子を見ると、いつの間にか硝子にはいっていたひびが修復されていた。それどころか、前見た硝子よりも輝きがあり、明らかに異常な物であると悟っている。目の前に起きた光景を疑っている誠は口を開けたままアズサと窓硝子を交互に見ている。


「……凄い」


とただ一言そう言って、誠は窓を見つめた。
使用人達はアズサの起こした出来事に驚くことはなかった。しかし、その美しすぎる光と鮮やかな魔法を見て惚けている。



「冥界ロードを渡るまでのしがらみは全てなぎ払うわ」



アズサはそう言って魔導書を閉じた。低く重い音がなり、僅かに魔導書の周りにあった光も閉じたと同時に消えている。
白い手が本を上向きにすると、魔導書はひとりでに中へ浮いた。重力とは無縁と言いたげなほど軽々と。
誠は自分の手の平を見つめている。妖には魔法が使えることを悟り、自分の手を疑った。


「見ていた通りよ、誠」
「妖は魔法を使えるんですね」
「まあ、魔法というよりかは魔術に近いわね。誠、貴方でも使える筈よ」


ただそれだけアズサは言うと、誠を見た。誠は再び自身の手を見つめる。己に宿っている見えない何かをじっと見つめても面白くないだろうに。そうアズサは思った。


「魔術、か」


その時黒曜石のような黒い瞳がぐらりと歪んだのを、アズサは見逃さなかった。そして、窓の外に見えるごくわずかな光を纏った二つの影にも。

光は、交差する。目に見えない境界線をつくり、交わったかと思えば消えてゆく。始まりには終わりがあるように、妖にも人間にも寿命がある。
そして、世界に終わりの影が覆う日が来ることを、アズサは予想していた。しかし目の前に、大きな善と悪を纏った悪魔が立ちはだかることも、アズサの瞳には映っていた。

世界は残酷だ。とアズサは思った。



「判ってるのよ、ステラ、ルーン」

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赤菊 藍(プロフ) - 逸さん» お褒めの言葉ありがとうございます。自分でもこの作品は好きなので感想を頂けてとても嬉しいです。三人称という今まであまり書いた事の無い小説ですので如何せん更新が遅くなるとは思いますができる限り頑張ります。最後まで読んで貰えるように頑張りますね。 (2019年5月6日 8時) (レス) id: cc808b1622 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 一瞬で世界観に浸ってしまいました、とても面白いです。好きなジャンルですし、赤菊さんが書く細かい描写や構成のおかげで読みやすかったです。更新楽しみに待っています。無理をなさらずに頑張って下さい、応援しています。 (2019年5月6日 5時) (携帯から) (レス) id: 44c32ecf85 (このIDを非表示/違反報告)
赤菊 藍(プロフ) - 旅人さん» そのような評価を頂き光栄です。この作品は色々と自分の可能性を広げようと試行錯誤しているものなので、やや更新頻度が遅めですが温かく見守っていただければ幸いです。素敵な感想ありがとうございました。 (2019年1月13日 8時) (レス) id: cc808b1622 (このIDを非表示/違反報告)
旅人(プロフ) - 描写がはっきりとしていてとても読みやすいです…!更新楽しみにしています! (2019年1月13日 1時) (レス) id: ec476d732d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:赤菊 藍 | 作成日時:2019年1月1日 1時

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