290:そらる ページ25
(あれ...？)
目を覚ますと手首が痛い。
身体中も。
寝惚けた頭には、彼が優しく言ってくれた寝る前の嬉しい言葉達がすぐに思い出せるのに目の前の景色は思い描いていた景色と違う。
(ここは)
手首と足に感じる重みと痛み。
昼か夜かわからない光すら漏れないカーテンに眩し過ぎるシャンデリア。
真っ白なワンピースに鼻につく自分の髪の甘い匂い。
「なんで、、、？！」
助けに来てくれた。
彼も、みんなも。
もう大丈夫と抱き締めてくれた。
千切れたブレスレットは元通りにしてくれた。
一緒にお風呂も入った。
1000回キスするねと笑った彼の顔を今でもすぐに思い出せるのに。
なんで、なんで、、、？
どうして高瀬さんの部屋にいるんだろう。
呆然とした頭で起き上がろうとしても手首の手錠が邪魔で上手く起き上がれない。
力を入れれば痛む身体と手首の傷が夢じゃない事を鮮明にさせて頭が混乱する。
どこからが夢？
これが夢？
それとも、助けに来てくれたのが夢？
寝る前にしてくれた彼のキスは鮮明に思い出せる。
抱き締めて眠ってくれた体温だってまだ残っている気がするのに。
(センラ、、、)
何度も一人にしてごめんねと謝った彼の声はなんだったんだろう。
私がして欲しかった事を夢に見ただけ？
「どうしたの」
振り返れば、真っ黒な人影。
この声を知ってる。
「そらる、さん？」
「あれ？どうして名前を知ってるの」
不思議そうな声だけで表情のわからないその人は会ったことがあるはずなのにどうしてなんて言う。
(やっぱり、助けに来てくれた事が夢なんだ)
急に襲いかかってくる虚無感に泣きたい気持ちでいっぱいになる。
なんだったの。
もう大丈夫って言ってくれた声は優しかった。
抱き締めてくれた体温は、確かに彼のものだったのに。
夢なら覚めて欲しい。
でも、夢ならこんなに身体が痛いはずない。
「あらら、、、」
いよいよ泣き始めた私にそらるさんはどうしよう、とあからさまに困った声を出した気がしたけどそんなのどうでもいい。
突然扉が開く音に肩が条件反射のように跳ねる。
「なんで泣いてるの」
会いたくない人。
不機嫌そうな声と顔に、また殴られると確信する。
近寄らないで。
帰して。
さっきまで幸せだったのに。
「もうすぐ終わるよ」
そらるさんの声。
この声はいつも殴られてる時にする声で、じゃあ私はやっぱり今から...
(センラ)
乱暴に捲られる布団に覚悟を決めてブレスレットに触れるように枕を握った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 775人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あーりん(プロフ) - 神楽さん» ありがとうございます( ; _ ; )元の甘々要素に戻したくてふんだんに取り入れていこうとしてます、、、w甘々になってるのか？と自問自答付きですがw (2019年9月21日 2時) (
レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
神楽 - 甘々ですな...。最高ですな.........。（語彙力低下中） (2019年9月20日 16時) (レス) id: 007b538a5a (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - 無為さん» コメントありがとうございます！離れてさせていた分これからは暫くは穏やかな2人をお送りできればなーと思っております！更新頑張ります！ (2019年9月16日 2時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - 珠菜さん» ありがとうございますー！長いだけのお話なのに一気読みありがとうございます、お疲れ様でした( ; _ ; )これからも楽しんで頂けるように頑張ります！ (2019年9月16日 2時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - ゆうさん» 楽しみにして頂けていて嬉しいです( ; _ ; )！ハラハラしてもらうのが目的だったのでゆう様にそう言って頂けて、伝わってるんだなと安心出来ました！w (2019年9月16日 2時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あーりん | 作成日時：2019年8月28日 7時
