281:うしさ天 ページ16
手元に戻ってきたブレスレットをもう離さないように握りしめているとその上から彼の手も重ねられた。
もうつけることは出来なくても、大事に手元に置いておけるだけでいい。
それだけで十分。
「それ、、、壊されちゃったんだね」
大事にしてたのにねと天月さんの残念そうな顔に頷くと、貸して欲しいと拳の中にあるブレスレットを指された。
「これ?」
「そう」
千切れてバランスの取れなくなったブレスレットを私の手首に掛けると細いチェーンが揺れる。
「大丈夫だよ」
「、、、!あれ?!」
目の前で揺れていたチェーンは天月さんが杖を振ると私の手首に掛けられ元通りになっていた。
「僕のこと忘れちゃった?」
「え?」
どういう事?と天月さんを見ると眩しいほどの笑顔を向けていた。
「僕と坂田は、魔法使いだよ」
(そうだった)
千切られてしまったチェーンは腕をすり落ちる事無く元通りに輝いている。
貰った日の様に角度を変えて眺めていると嬉しくてまた泣きそうになってきた。
「忘れてたね、、、ありがとう」
「泣かないで。なんかセンラさん怒ってるし」
彼の顔を見上げるとなんとも言えない顔をしていてどうしたのと問いかけると口を開いた。
「もっとええやつプレゼント出来るチャンスやってんけどなぁ?」
「あらら。余計な事しちゃってごめんなさいね」
拗ねた様な彼の言葉と天月さんの言葉に口角は上がる。
「何にもいらない。これさえあればもういいから」
だから拗ねないでと見上げると彼の表情は和らいだ。
「あー!天ちゃんがもう直してる!くやしーっ!」
出遅れた!とうらたんを振り切ったさかたんが何かを手に持ってベッドサイドに腰を下ろした。
「お前はまだ帰ってなかったんか」
「うらたさんと同じ事言わんといて」
じゃあ俺はこれあげる、と百貨店の有名なチョコレートをベッドの上にばら撒くと杖を振る。
「、、、わぁ!凄い!」
「おい!そろそろやめろ!」
「えへ」
杖を振る度に増えるチョコレートに笑っていると両手では持てないほどの数になって彼が手首を掴んで止めている。
「だってー、僕だって何かしたかってんもん」
「うわ、坂田やりよったな」
「こんなに食えねーだろ」
まーしぃとうらたんも小さな山になったチョコレートを見て笑っていた。
相変わらず、私に使われる魔法は優しいものばかりで下を向けばまた涙が零れてしまう。
あほやなぁ?と聞こえてきた小さな呆れた彼の声は心做しか嬉しそうだった。
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あーりん(プロフ) - 神楽さん» ありがとうございます( ; _ ; )元の甘々要素に戻したくてふんだんに取り入れていこうとしてます、、、w甘々になってるのか?と自問自答付きですがw (2019年9月21日 2時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
神楽 - 甘々ですな...。最高ですな.........。(語彙力低下中) (2019年9月20日 16時) (レス) id: 007b538a5a (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - 無為さん» コメントありがとうございます!離れてさせていた分これからは暫くは穏やかな2人をお送りできればなーと思っております!更新頑張ります! (2019年9月16日 2時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - 珠菜さん» ありがとうございますー!長いだけのお話なのに一気読みありがとうございます、お疲れ様でした( ; _ ; )これからも楽しんで頂けるように頑張ります! (2019年9月16日 2時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - ゆうさん» 楽しみにして頂けていて嬉しいです( ; _ ; )!ハラハラしてもらうのが目的だったのでゆう様にそう言って頂けて、伝わってるんだなと安心出来ました!w (2019年9月16日 2時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あーりん | 作成日時:2019年8月28日 7時