妖たちと暮らす家６

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(センラ...？)

真っ暗な中に見慣れた金色の淡い光が見える。
暗闇に慣れてきた目で彼の顔を確認すると目を細めて髪を撫でてくれた。
優しく梳かれる髪に、眠ってしまいたくないのにいつもの癖で目を閉じてしまう。

「おやすみ」

小さな甘い声が残る。

嫌だ、寝たくない。
待って。

ガチャリと響いた音にハッとして目を覚ますと自分の寝室じゃない壁紙が見えた。
久しぶりに見た彼の顔に驚いて顔を上げるとドアの前でスーツを着た高瀬さんが立っていた。

(夢、、、)

ここにいるはずがない夢で見た彼を思い出して見たくない相手が目の前にいる事に言葉に出来ない気持ちになる。

「寂しくて泣いてる？可愛い、、、」

いつの間に流れていたのかわからない涙を見て嬉しそうに笑っている。
いつもそう。
高瀬さんは私が泣くと喜ぶ。
可愛いね、僕しか見れない顔だねと笑いながら気味の悪い顔で今も近付いてくる。
早く会社へ行って欲しい。
さみしくて泣くなんて有り得ない。

「良い子で待っててね？」

愛してると頭を撫でられて眩暈がする。
いつもより機嫌良く部屋を出ていったドアを眺めていると手錠をされた手の甲に涙は落ちていく。

私が泣くと、彼はどうしていたっけ。
長い指で涙を拭ってくれた。
なんで泣いてるのと優しく抱き締めてくれた。
気の済むまで泣かせてくれて、泣き止むまで背中を優しく撫でてくれた。

(どうしたん)
(落ち着いた？大丈夫？)
(笑って)

私が泣いたら、彼はいつも慌てていたのに。

優しい訛りの、甘やかす声がもう一度聞きたい。


私が泣くと慌てるよねと彼に言うと当たり前だと返されたのが懐かしい。
いつも笑ってて欲しいと頬を撫でてくれた。
笑った顔が大好きだと目を細めて抱き締めてくれた。

どうやって笑っていたかもう忘れてしまった。

何気ない事でよく声を上げて二人で笑った。
嬉しい時は自分でも笑顔になっている事がわかった。
幸せでしょと先輩が聞いてくれた時の私の顔は笑っていたと思う。

(大好き)

彼に大好きと言われる時は、今一番可愛い顔で笑ってると彼も笑ってくれた。


ねぇ、センラ。
今私泣いてるよ。
なんでここにいないの。
笑った顔が好きなんでしょ。
早く来て。
いつもみたいにどうしたのって抱き締めて。
笑ってって、可愛い顔が台無しだよっていつもキスしてくれたでしょ。

さっきより溢れてきた涙で目の前が歪んでいく。
久しぶりに出した声は嗚咽で言葉にならなかった。

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