妖たちと暮らす家５

201 ページ22

「何もしないって、言った、、、」

「キスだけ」

お願い、と甘えた声を聞いて文句が言えなくなってしまった。
何度も優しく重ねられる唇はさみしいと言われている様で同じ気持ちだからか止めさせることが出来ない。
それどころかいつもみたいにして欲しいとねだってしまいそうな自分がいて何もしないでと言った癖に彼に期待してしまっていた。


「、、、これ以上は我慢出来ひんくなるから終わり」


また一緒にお風呂入りたいしと唇を離しておどける彼にきちんと約束を守るこういうところが好きなんだったと息を整えながら思う。

「続きは帰ってきてからしていい？」

抱き締められながら低く囁かれた言葉に声もなく頷くとはよ明後日にならんかなー、といつも通りの彼の声になった。

「ちゃんと寝るんやで」

「一人で寝れるかってからかったくせにー」

「ご飯もしっかり食べや？」

「センラお母さんだ」

すっかりいつも通りの彼に笑うとお母さんの言うことちゃんと聞いてんのー？とふざけてくれた。

「寝れなかったら電話する」

「ん。Aちゃん寝るまで話そ」

「眠くならなかったら？」

「俺やで？Aちゃん寝かせられへん訳が無い」

自信満々に答える彼に小さく笑うと信用してないなー？と長い指が頬を撫でる。

「きっと慣れへん仕事で疲れると思うから心配」

急に優しくなった声色に彼の顔を見上げると少し濡れた髪の目を細めた艶っぽい顔が見えてどきりと心臓が跳ねた。

「どうしたん？」

「なんでもない、、、」

「そう？」

そろそろ上がろうかと残念そうに声をかける彼に頷いてお互いの髪をふざけながら洗い合ってひとしきり笑ってお風呂から上がると少しさみしさが紛れた気がした。

恥ずかしくて嫌だと断り続けていたけど、私を気遣ってか本当に何もせず穏やかに楽しく入れたお風呂にたまには一緒もいいかもしれないと彼の髪を乾かしながら思った。


「寝たら明日が来ちゃう...」

「行かなあかんねんからはよ寝て終わらそう」

肘を付き私を見下ろして寝かしつけるように静かな声で髪を撫でられると不思議とだんだん眠たくなってくる。

「お風呂楽しかった。わがまま聞いてくれてありがとね」

「うん、、、一緒に入るのもいいね」

「ほんま？！毎日？」

「毎日はやだ」

なんで！と拗ねた声に目を閉じたまま笑うとおやすみと小さなキスが降ってきて憂鬱な気持ちも何処かに行っていつの間にか意識を手放していた。

202→←200:センラside

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す