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172:天月side ページ38

会社ですれ違う度、かすかに同じ匂いがするなと思っていた。
どう見ても人間なこの子から俺たちと同じ匂いがするのはなんでだろう。
自分のように人間に解け込んで生活出来るくらいの高等な妖なら顔を知らないはずがない。
化けているんだとしたら、妖力をほぼ感じない。
不思議な子だなと見かける度に気になっていた。




(あれ...?)

あの子の姿を見かけて、すれ違ってみると前にも増して近しい匂いを感じるようになった。
稀に血縁に妖がいる場合もある。
その血を受け継いだ子だからそう感じるのかなと自己完結をしかけていた時、飲み会でようやく理由がわかった。


(センラさん...?)

あの子を腕に抱いて目の前の人間に今すぐ噛み付いてしまいそうな雰囲気の、よく知る姿がいた。
こちらとは別世界の争い事でセンラさんは随分と酷い怪我をしたはず。
寸前の所で守れるよう結界は張ったもののしばらく眠っているものだと思っていたから驚いた。
センラさんが元気な事にも、人間の女の子をあんなに大事そうに守っている事にも。

(あんな人だったかなぁ?)

自分がよく知るセンラさんは身内には優しいし頼りになるけど、人間に対しては何処か冷めていて契約も妖力を上げるためだと渋々していたような気がする。
かつて契約した人間は、死にかけてセンラさんに助けを求めても死に損ないはもう用無しだと見捨てていたのに。
でも今はどうだろう。
酔って足元のふらついたあの子を庇うように腕を伸ばしていた。
不安そうなあの子の手を繋いで、人間のように社交辞令の挨拶をにこやかに交わしている。
盗み見た二次会に行かず帰る二人は、どう見ても人間の恋人同士でセンラさんは見た事のない顔で笑っていた。

(Aちゃんて言うのか)

センラさんと契約したからだったのか。
話してみたいなと好奇心が湧く。
自分のよく知る仲間が一生懸命になるあの子はどんな子なんだろう。
判別するためのもので匂いはもちろん仲間内にしかわからない。
でもその匂いが伝染るという事は一緒に暮らしているんだろう。

二次会で女性社員が周りに来てくれたけどあまり覚えていない。
頭の中は二人の事で頭がいっぱいで、ここ最近にしては珍しく仕事以外で楽しみが出来た。

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設定タグ:歌い手 , 浦島坂田船 , センラ   
作品ジャンル:恋愛
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あーりん(プロフ) - lonleyさん» コメントありがとうございます!やっと書き始める事ができたのでのんびりにはなると思いますが読んで頂けると嬉しいです★ (2019年7月11日 23時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - ふらわぁさん» 気味悪さを表現したかったので、最高の褒め言葉ですwありがとうございます!笑 (2019年7月11日 23時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
lonley - すごくおもしろかったです! 坂田くんver.気になって仕方ありません!! これからも頑張ってください! 応援してます! (2019年7月10日 21時) (レス) id: 39388112b7 (このIDを非表示/違反報告)
ふらわぁ(プロフ) - おかえりってところでゾクってしましたw (2019年7月10日 20時) (レス) id: c190ba3ed4 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - もえかさん» コメントありがとうございます!どちらも読んで頂けて嬉しいです( ;__; )今後もよろしくお願いします! (2019年7月7日 16時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あーりん | 作成日時:2019年6月19日 6時

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