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「こら。なんで逃げるん」
ずらした身体は簡単にまた膝の上に戻されて背中をホールドされてしまった。
素直になりすぎるんじゃなかったと数分前の自分を恨む。
「で、俺の顔みて安心してあんなに泣いてたん?」
「そうだけど、、、なに」
彼の笑顔がこわい。
「いや、可愛いなぁと思って。泣くほど好きでいてくれてんやなぁ」
なんだかそれに頷くのも悔しくてまた下唇を噛むと切れちゃうからあかんよと舐められてもうどうしようもない。
「私が泣くとセンラっていつも慌てるよね」
「そりゃそうやろ。一大事やからな」
心配でかなわんわ、と話を逸らそうとしたのに当然とばかりに言葉を返す彼に顔が赤くなる。
「笑ってる顔が一番好き。幸せにするって決めてるから」
「、、、ありがと」
からかう訳でもなく真剣な顔になった彼はかっこよくてどきどきと脈が早くなる。
「Aちゃんは?好き?」
「好き」
満足そうに頷くとソファに降ろされた私の身体は横抱きにされ抱え上げられてしまった。
「ちょっと、センラ?」
「可愛いAちゃんが悪いんやで」
足は確実に寝室へと向かっている。
お風呂入りたいからと足をばたつかせてもビクともしない彼の腕に諦めるわけにはいかない。
「センラ、やだ!」
「えー、、、」
「嫌。お風呂入りたい」
「わかった」
ベッドに降ろされて滑り込んだ手を止めながら言うとそんなに言うならと大人しくお風呂場へと向かわせてくれた。
お風呂を済ませて寝室へ戻るとおいでと布団が捲られる。
柔らかい口調に大人しく布団に入ると文句を言おうと開こうとした口はすぐに塞がれてしまった。
ずっと一緒におるからねと何度も言われ手を繋がれたまま身体を重ねて、不安になった時にいつも以上に感じられる彼の優しさに今日何度目かの涙が零れそうだった。
「今日はえらい泣き虫やなぁ」
涙目になっていたのか事が終わって私の顔を見た彼は笑って唇を瞼に落とした。
「今日はそういう日なの。あんまり見ないで」
「可愛いよ。大好き」
重ねられた唇と、繋がれた手の力強さに安心する。
「悲しくて泣いてるわけじゃないAちゃんの泣き顔、なんかええな」
「、、、詳しく聞かないでおくね」
普段通りに気持ちが落ち着いた私の気配を察した彼がふざけたことを口にするから、もう寝るよと瞼を閉じる。
今日はこうやって寝ようといつもの体制で手を繋がれて、こういうことをしてくれるから嫌味も言えないんだよねと静かに思った。
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あーりん(プロフ) - lonleyさん» コメントありがとうございます!やっと書き始める事ができたのでのんびりにはなると思いますが読んで頂けると嬉しいです★ (2019年7月11日 23時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - ふらわぁさん» 気味悪さを表現したかったので、最高の褒め言葉ですwありがとうございます!笑 (2019年7月11日 23時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
lonley - すごくおもしろかったです! 坂田くんver.気になって仕方ありません!! これからも頑張ってください! 応援してます! (2019年7月10日 21時) (レス) id: 39388112b7 (このIDを非表示/違反報告)
ふらわぁ(プロフ) - おかえりってところでゾクってしましたw (2019年7月10日 20時) (レス) id: c190ba3ed4 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - もえかさん» コメントありがとうございます!どちらも読んで頂けて嬉しいです( ;__; )今後もよろしくお願いします! (2019年7月7日 16時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あーりん | 作成日時:2019年6月19日 6時