妖たちと暮らす家４

153:センラside ページ19

「こんばんは」

ここで俺が失敗すればAちゃんが嫌な思いを会社でする羽目になるしなぁ、と考えを巡らせていると彼女の隣に立つ女の子が間に入ってくれている。
同僚だと教えてくれた子だと気付き挨拶をすると彼女も俺に好意的だった。

Aちゃんを気遣って話してくれているのが見て取れて、いい友達がいるんだなと嬉しくなる。
今度あの三人にこの子と先輩たちも会社で何かあったら助けてあげて欲しいとお願いしようと思いながら視線をあいつに向ける。

(すごい顔やな)

睨み付けるような視線を向けられ続けているのを気付いていなかったわけではない。
嫌な視線を纏い続けてイライラがピークに達した俺は冷静になろうとAちゃんの肩を抱いたとき、あいつの視線がより一層鋭くなったのを見た。

(俺のやから、そんな顔されてもな)

付け入る隙を見せてたまるかと視線を返す。

ようやく帰れることになって、上司に挨拶をしてくると言って離れたAちゃんを待つ間、お互いの視線は鋭いものでAちゃんに見せれる顔では無かったと思う。

びっくりした？と聞くと楽しそうに笑うAちゃんの姿を見て悔しそうに口元が歪んだのを見逃さなかった。

欲しいと言われても絶対に譲れない存在やからなぁ、とからかうと拗ねてしまったAちゃんの手を見せつけるように繋いだ。

(これで諦めてくれたらええんやけどなぁ)

可愛いから好きになる気持ちはわかるけどな、と隣で笑うAちゃんに視線を下ろした。



楽しくデートをしていたはずなのに、さっきからAちゃんの様子がおかしい。
あんなに楽しそうに笑っていたのに。
顔は少し火照ったままだし酔いが回ってきたんだろうかと心配になるけど、どうしたものか。

「Aちゃん？」

「なに？」

人多いから疲れた？と俺の心配をするAちゃんはいつも通りに見えるけど少し元気が無い。

(自惚れかもしれへんけど)

さっき道を聞かれた女の子の話をしてから、様子がおかしい、、、と思っている。
俺があいつの存在を良く思っていないように、Aちゃんももしそうなら嬉しいなと期待してしまう。

「どうしたん？元気無い。しんどい？」

酔いがやっぱり回ってきたのかと聞いても静かに首を振るだけ。

(違ってたらどうしよ)

154:センラside→←152:センラside

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す