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「Aちゃん、危ないからもっとこっちおいで」

満員とまではいかないが混んでいる車内、距離を取ろうと離れようとしたら逆に引き寄せられてしまった。

「いえ、大丈夫です」

一番危ないのはあんただよ、と心の中で悪態をつくも笑顔を崩す訳にもいかず1度引き寄せられた身体を離した。

次の駅でも続々と人が乗り込んでくる。
ヒールで不安定な私は少し人の波に押されてふらついてしまった。

「ほら、危ないから」

「いえ、本当に大丈夫なので」

いよいよ満員になってきた車内で引き寄せられた事によりさっきより距離が近くなってしまった。
腰に置いていたはずの手がだんだん下がっているような気がする。
距離を取りたくても背中から押される人の圧に逆らえない。

生暖かい手の感触にまた鳥肌がたつのがわかる。

「混んでるねえ?」

少し顔を上げると気持ち悪くにやついている。
わざとらしくかけられた声にもう返せなくなる程気分が悪くなっていった。

私が何も言わないのをいい事に本格的に腰ではなく別の位置を触っている。
密着した身体の体温にも嫌悪感は増していく。


(気持ち悪い...)

足元がふらつく。
めまいがする。
気持ち悪い。
早く帰りたい。

最寄りではないけどさっき告げた嘘の駅名のアナウンスが流れる。

1駅がこんなに長く感じたのは初めてかもしれない。
電車のドアが開く前にお疲れ様でしたと顔を見ずに身体を引き離し告げると急いで電車を降りて改札を抜けた。

また電車に乗り込む気にもなれず駅前のタクシーに飛び乗る。


身体を触られていた感触と生暖かった体温の嫌悪感で座っているのに視界はぐるぐると回っているような気がする。

とにかく今は一刻も早く家に帰りたい。
彼の顔が見たい。
寂しかったといつもみたいに抱きしめて欲しい。
大丈夫、家に帰れば彼がいる。
一緒にご飯を食べて、たくさん甘やかして、一緒に寝たらこんなの忘れてしまうに決まってる。

お釣りを受け取る時間も惜しい程早く帰りたかった為、初めてお釣りは大丈夫ですと断ってタクシーを飛び降りた。

見慣れたマンションのエントランスに、やっと帰ってきたと安心感が込み上げる。

自分の部屋までの廊下も長く感じる。
ヒールの音が響く程に足は家へと急いでいた。

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設定タグ:浦島坂田船 , センラ , 歌い手   
作品ジャンル:恋愛
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おかゆ*(プロフ) - 番外編ありがとうございます!小センラさん大好きだったので悶えました……無理しない程度に頑張ってください (2019年10月9日 12時) (レス) id: 8572672a4d (このIDを非表示/違反報告)
関西風しらすぅ@坂田家 - 言葉喋るショタより何も喋らずに言葉理解してなかったり仕草で感情表現するショタの方が天使よな。まぁつまり神ってことよ。何のご褒美ですか。平日の夜中4時ににやけながらこれ読むってただの変態なんですけど。 (2019年6月6日 4時) (レス) id: f34e486c2f (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - あのんさん» ありがとうございます!コメント頂けると励みになります(;o;)これからも楽しんで頂けると嬉しいです! (2019年5月26日 20時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
あのん(プロフ) - とても好きです!!読む度癒やされてます! (2019年5月26日 20時) (レス) id: 2726eacb2c (このIDを非表示/違反報告)
月希(プロフ) - あーりんさん» 全然!!気長に待ってます!! (2019年5月22日 0時) (レス) id: 106e1f2421 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あーりん | 作成日時:2019年5月17日 21時

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