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呪いの種 ページ4

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私の体から流れ落ちる赤は、足元の水面の赤に溶けるようにして消えていく。


……歯を食いしばれ、思考を休めるな。私の頭の中では目まぐるしく言葉が飛び交っている。






「ほう、まだ倒れぬとは……根性だけは大したものだ。褒めてやる」


『っ……あんたに褒められたところで、これっぽっちも嬉しくない』






段々と息が浅くなってきて、頭が上手く回らない。


そのうちにも宿儺は私の方へゆっくりと距離を詰めており、脳裏には昨日と同じ光景が過った。


いたぶり、弄ばれた記憶に体は従順で、喉元が細くなるのが分かる。

けれどここで怖気付いてしまったら、また昨晩と同じことになってしまう。

そしたらきっと、アイツは私をいつまでも嘲笑い愉快げに面を緩ませるだろう。






「弱いヤツは好かんぞ?ほら、頑張れ頑張れ」






崩れ落ちそうな私を見据え、楽しそうに言う宿儺の顔を見上げる。


この屈辱的な状況に、私の中の怒りがふつふつと音を立てて煮えたぎっているのが分かった。


その間にも傷付いた頬に骨ばった手が滑らされ、親指の腹を使い傷口を撫でられる。

まるで私に勝機が無いことが前提と言うような態度だ。すこぶる腹立たしい。






『弱くて、ごめんなさいねっ……でもッ、あんただって、驕り高ぶるような女より、いじらしい女の方が好みでしょう……?』






だから私は、その怒りを原動力にして動くだけ。


コイツの命に干渉できないなら、自分が出せるせめてもの刃で、残る傷を付けてやる。






「オマエ、正気か?」


『どうだろっ……だいぶ狂ってるんじゃないッ?』






私は頬に添えられていた宿儺の手を剥がし、腕を掴むようにしてこちらに力強く引っ張る。

血の抜けていく感覚に頭がぼんやりとするが、最後の賭けに踏ん張るようよろける体を踏みとどめた。


そう、私はあんたを祓いたいんじゃない……呪いたいだけ。

今の私にはそれに及ぶ力なんて無いかもしれない。だからどんな些細な爪痕でも良い……いつか私がそれを火種にして、あんたの面食らった顔を拝んでやるんだから。






『自分でやったんだからね……血なまぐさいとか言わないでよ』


「チッ……ほざけ、餓鬼ッ」





……口の中に滲む微かな血の味が、絡みついて離れない。


この現実なのかも分からない狭間の中で、私は二度目の口付けをした。






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朝→←痛み



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いか焼き - さ い こ お です!この話マジですこ… (2022年7月4日 2時) (レス) @page50 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
すみれちゃん - 続編決定…!ありがとうございます泣 (2022年2月27日 1時) (レス) @page50 id: 1871179020 (このIDを非表示/違反報告)
AG2(プロフ) - タイトルに目を惹かれ読んでみたらめちゃくちゃ面白かったです……!今後どうなるかとても楽しみ……!更新頑張ってください!! (2022年2月8日 7時) (レス) id: 382d4af167 (このIDを非表示/違反報告)
ハリネコ - 更新してくださる事が嬉しいですっ!これからも、作者さんのペースで頑張って下さい! (2022年2月3日 23時) (レス) @page27 id: 690aee62a7 (このIDを非表示/違反報告)
mithukoaaa0306(プロフ) - 面白すぎて一気に読んでしまいました! (2022年1月30日 2時) (レス) @page8 id: 96b8b42efc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2022年1月29日 15時

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