指先と生け贄〈弐〉【両面宿儺】

褒められて伸びる ページ25

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『どうでしょうか……！』


「……驚いた。本当にできるようになっているじゃないか」






綺麗になった傷口を見ながら、硝子さんは睫毛の長い女性らしい目を大きく見開いて言う。


先程コツを掴んだおかげで、切り傷くらいならば治療することができるようになった。

硝子さんに比べれば実力はまだまだだけれど、その辺はこれからゆっくり伸ばしていこうと思っている。






「この程度でも治癒ができるようになれば、あとは呪術の基礎を叩き込んで成長していけば良い。良くやったな」






硝子さんは私の頭を優しく撫でながら、丁寧に褒めてくれる。


褒められて伸びるタイプの私からしたら、この上なく嬉しいことはない。






『やっぱり私には色々と難しく考えすぎる癖があるみたいです。だからアイツにもああだこうだ言われるんだろうなあ』


「アイツって？」


『宿儺です。呪力を介してだかなんだか知らないけど、たまに声が聞こえるんですよね……』






私に呪力の在り方を教えてくれたあの日から、アイツはだんまりだけど。


なんの匙加減で出てくるのかも分からないし、正直何よりも謎が多い。


もちろん、悠仁とも私みたく話したりできるのだろう。

今度顔を合わせた時、悠仁にも聞いてみようか……。






「へえ、興味深いな……少し調べても良い？」


『嫌ですよ。痛いの嫌いだし』


「ふふ、冗談だよ」






なんて言いながらメスを手に持ち微笑む硝子さんなら、実際にやりかねないのでちょっと怖い。


真希ちゃんも言っていたけれど、他人を治癒する反転術式の使い手というのはかなり希少らしく、硝子さんも日夜問わず引っ張りだこらしい。


そのせいで、目の下には濃い青クマが。とは言え、言い方は悪いかもしれないが、それも彼女のチャームポイントになっている気がする。






『……私、頑張って腕磨きますから。そしたら、硝子さんのお手伝いしてあげますね』


「それは頼もしいな。首を長くして待っているよ」






硝子さんはそう言うと、柔らかく笑いながらもう一度私の頭を優しく撫でた。







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